「アス」(2019米)
ジャンルサスペンス・ジャンルSF
(あらすじ) 幼い頃に遊園地のミラーハウスで自分とそっくりな少女に遭遇したアデレードは、その時のトラウマを抱えながら、今は夫と2人の子どもたちと幸せな家庭を築いていた。夏休みに家族と共に避暑地を訪れたアデレードは、そこで恐るべきものを目撃する。それは自分たちとそっくりな4人家族の姿だった。彼らは突如アデレードたちに襲いかかってくる。
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(レビュー) 自分たちとまったく同じ容姿をした家族に襲われる不条理サスペンス。
クライマックスですべてのネタが明かされるが、なんだか今一つ釈然としなかった。色々と考えてしまうと突っ込みを入れたくなる作品で、余り深く考えないで観たほうがいいのかもしれない。あくまでこれは寓話として捉えるべき…そんな風に思った。
監督、脚本は
「ゲット・アウト」(2017米)でセンセーショナルな長編デビューを飾ったジョーダン・ピール。
どこかシュールなユーモアが感じられのは、この監督の作品の特徴である。しっかりとした怖さもありながら、時にコメディのような笑いも漂わせ、不思議なテイストの作品になっている。
不穏なラストも後を引く感じで良い。
今回の物語のベースには、おそらくドッペルゲンガー現象があるように思う。そういう意味では、前作「ゲット・アウト」よりもホラー色が強い作品となっている。
ただ、本作は単なるジャンル映画として一括りにできない奥深さも持っていて、そこには「ゲット・アウト」同様、J・ピールの作家としての懐の深さを感じた。
神域を恐れぬ科学技術の進歩に対する警鐘。更には、現代の格差社会に対する痛烈な皮肉が、物語の重要なキーワードとして作中に配置されている。メッセージ性を含んだ社会派エンタメ作品として、実に巧妙にできていると思った。
キャストでは、アデレードを演じたルピタ・ニョンゴの熱演が印象的だった。元オスカー女優だけあって演技の実力自体は折り紙付きである。しかも、今回は愛する家族を守って戦う強い母親像をも体現しており、アクションシーンにも果敢にチャレンジしている。正に八面六臂の活躍を見せている。