「ディスタービア」(2007米)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 父親を交通事故で亡くした高校生のケールは、自暴自棄になり学校で教師を殴ってしまう。裁判所から3ヶ月間の自宅軟禁処分を言い渡され、半径30メートルを越えて行動すると警察に通報される監視システムを足首に取り付けられた。暇を持て余したケールは近所の覗き見を始めた。そんなある日、彼は血まみれのゴミ袋を引きずる人影を目撃する。
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(レビュー) A・ヒッチコックの「裏窓」(1954米)を想起させる設定だが、結論から言うと、あそこまでの卓越したユーモアと演出的魅力は感じられなかった。
「裏窓」は何と言っても物語の舞台装置が秀逸だった。アパートという限定された箱庭的世界は映像的にとても魅力的だった。定点観測カメラによる覗き見の禁忌と興奮を明快なショットとして表現しえたのは、やはりヒッチコックの才能だろう。
それにひきかえ、本作にはそこまでのアイディアと映像的な魅力は感じられない。設定は似ているが、それを超えるような演出的な魅力には欠ける作品である。
ただ、さすがに現代の映画だけあって、スリリングさという点では「裏窓」よりも本作の方が迫力が感じられた。殺人事件の目撃、その1点に集中させた作劇のおかげかもしれない。
物語前半はケールとガールフレンド、アシュリーの出会いと恋心を中心とした、言わばボーイ・ミーツ・ガール物となっている。父親の死という冒頭の重荷はどこに行ってしまったのだろう?と気にはなったが、シリアス度を敢えて抑えて、気楽に観れるティーンズムービー的なノリに仕上げられている。そして、二人の間には覗き見する、覗かれるという関係が築かれており、それがいつどこで恋心に発展するか?そこに注目しながら観た。
中盤からいよいよ殺人事件の捜査が始まる。これが存外シンプルでどんでん返しもないまま終わってしまったのが物足りなかった。ただ、スピーディーな演出のおかげでスリリングさは十分感じられる出来となっている。
また、半径30メートルに行動規制されていたケールが、そのラインを越えていく姿には、主人公ならではのヒロイックさも感じられた。このあたりは設定の勝利だろう。
欲を言えば、ケールの親友ロニーの使い方にもう少し面白みがあると良かったか…。ケールを助けるのかピンチを拡大させるのか。物語上の役割があまりハッキリとしない。
キャストでは、ケール役を演じたS・ラプールが適役だった。また、犯人役を演じたD・モースの抑制を利かせた不気味な演技も絶品だった。