「ミミック」(1997米)
ジャンルホラー・ジャンルアクション・ジャンルSF
(あらすじ) 未知の伝染病がNYで発生する中、昆虫学者スーザンは感染源であるゴキブリを全滅させるべくアリとカマキリの遺伝子を合成した新種の昆虫《ユダの血統》を生み出す。事態は収拾されたが、それから3年後、NYでは奇怪な猟奇殺人が続発する。その頃、スーザンは《ユダの血統》の特徴を受け継いだ突然変異の昆虫を発見する。
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(レビュー) 遺伝子操作によって生み出されたモンスターの恐怖をダークな映像で描いたアクション・ホラー。
原案・監督・脚本はギレルモ・デル・トロ。脚本家としてノンクレジットでS・ソダーバーグが参加しているらしい。いったいどういう経緯で彼が参加したのか分からないが、クセのある作家同士の面白い組み合わせだと思った。
ただ、作品自体はどこからどう切ってもギレルモ印である。ソダーバーグのカラーは余り感じられない。
まず、本作は地下鉄や夜の街のシーンが多く、このダークな色調にギレルモ監督らしいテイストを感じた。
また、猟奇殺人事件のカギを握る靴磨きの老人と孫が登場してくるが、これも前作
「クロノス」(1992メキシコ)における老人と少女の関係を想起させる。ギレルモ作品に登場する子供は常に一つの特徴がある。それは親がいないという孤児性である。
「デビルズ・バックボーン」(2001スペイン)もそうだった。子供の孤独感がドラマを紡ぐひとつのきっかけになっている。
物語は緊張感が途切れることなく流麗に展開されていて面白く追いかけることができた。
前半は、連続猟奇殺人事件とスーザンの独自の調査がサスペンスタッチで展開されている。事件の犯人がユダの血統の変種と睨んだ彼女は、自らが招いた混乱の責任感から、その怪物を追跡していく。
後半からは地下鉄を舞台にしたアクションに転じていく。スーザンの夫や地下鉄警察の職員といった個性的なサブキャラを巻き込んで賑々しく(?)展開されている。
ただ、これはやや持て余し気味な感じを受けてしまった。もう少しスリムな展開の方がスーザンの葛藤の掘り下げることができたのではないだろうか。
また、後半の地下鉄のシーンでは、明らかに「エイリアン2」(1986米)を意識しているような映像が出てくる。ユダの血統の巣の映像はマザーエイリアンの巣に酷似ていた。更に、スーザンが靴磨きの少年を救出するという展開自体が「エイリアン2」のそれと一緒で、さすがにこれには苦笑してしまった。
尚、ユダの血統というネーミングや物語の重要なシチュエーションを教会に設定しているあたりから、ある種教示的なメッセージも見て取れる。ギレルモ監督は往々にしてこうした教示性を作中に仕込むことがあるが、本作にもそれを確認することができた。そういう意味でも、本作はどこからどう切ってもギレルモ印な作品である。