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宇宙大征服


「宇宙大征服」(1968米)星3
ジャンルSF・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 米ソは有人月旅行プロジェクトで激しい競争を繰り広げていた。ソ連の科学者の有人ロケット打ち上げ成功のニュースが報道されると、米政府も早期に計画の発動をNASAに要請した。但し、乗員は軍人以外の人選ということだった。軍は当初の予定だった軍人のチズではなく民間人のリーをプロジェクトの乗員に抜擢する。
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(レビュー)
 有人月旅行計画にまつわる関係者の友情と衝突を描いたSF映画。

 製作された当時は米ソ冷戦真っただ中で、夫々にロケットの打ち上げが盛んにおこなわれていた時期である。本作の原作はその頃に書かれたSF小説で(未読)、実にタイムリーなネタだったのではないだろうか。それをTVシリーズ「コンバット」で活きの良い演出を見せていたR・アルトマンが監督している。本作は彼の長編映画デビュー作である。

 アルトマンと言えば、「M★A★S★H」(1970米)や「ザ・プレイヤー」(1992米)等、反体制的でシニカルな作風のイメージが強いが、そんな彼がまさかSF映画を撮っていたとは意外である。しかし、実際に観てみると氏らしい特徴は確かに色々と垣間見れる。

 まず、リーは米政府の要請でロケットの乗員となるが、それによって妻との関係は壊れ、親友であり本来搭乗する予定だったチズとの友情も壊れてしまう。SF映画というジャンル映画でありながら、そこで繰り広げられる人間ドラマは実にビターで重々しい。

 そして、リーの運命を考えると、彼は米ソ競争のプロパガンダに利用された被害者…という捉え方もできる。これは「M★A★S★H」における若き出征兵と重ねて見ることもできる。体制に利用され、体制に抗う主人公の姿は、いかにもアルトマンらしいキャラクターだ。

 もっとも、アルトマン自身は本作に対してあまりいい思い出はないらしく、自分の作品ではないとまで言い切っている。編集権はプロデューサーに奪われ、ラストシーンも本来、彼が考えていた物から差し替えられてしまったそうである。

 確かにラストは不自然に思えた。普通であればその手前で終わったほうが、ドラマとしての歯切れは良いし、テーマも明確に打ち出されたように思う。しかし、プロデューサーはそれを良しとしなかったのだろう。最終的に米ソ宇宙戦争のプロパガンダ映画という側面を強く打ち出した終わり方となっている。

 尚、アポロ11号が月面着陸に成功したのは1969年のことであるから、本作が製作された翌年ということになる。ここで描かれていることはフィクションであるが、未来を予見していたという見方もできる。

 映像的な見所は、NASAが全面協力したロケットの打ち上げシーンになろうか。かなりのリアリティが感じられた。
 ただ、NASAから提供された記録映像以外の部分。つまり特撮シーン全般については流石に古さを感じてしまう。
 例えば、懐中電灯がロケット内で浮くシーンは明らかに釣っているのが丸わかりで、同時代に製作された「2001年宇宙の旅」(1968米英)でペンが浮くシーンと比べると雲泥の差がある。「2001年宇宙の旅」と比べるのは酷というものだが、それだけ「2001年~」は当時としては画期的な映像だったということである。
[ 2021/01/17 00:11 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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