「Mr.タスク」(2014米カナダ)
ジャンルサスペンス・ジャンルコメディ
(あらすじ) 人気ポッドキャストを運営するウォレスは、取材のためにカナダを訪れるが空振りに終わってしまう。落胆していたところに面白そうなネタが見つかり、さっそく彼は元船乗りだという老人のもとへ取材に出向いた。しかし、ハワード・ハウと名乗るその老人には秘密があり…。
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(レビュー) インターネット界のカリスマが体験する恐怖をブラックな笑いで描いたサスペンス・スリラー。
何とも冗談みたいな内容で、果たしてこれは怖がるべきなのか、それとも笑うべきなのか迷う所である。観る人によっては、実におぞましいホラー映画にもなりうるし、逆にナンセンス・ギャグのように感じる人もいるだろう。ある意味で問題作かもしれない。
まず何と言っても、人間をセイウチに改造するという内容からしてぶっ飛んでいる。ある種見世物小屋的な奇怪極まる人体実験は、最近話題になった
「ムカデ人間」(2009オランダ英)を連想させる。「ムカデ人間」も相当奇抜な映画だったが、あれに通じるキワモノさを本作からも感じ取れた。
ただ、「ムカデ人間」は徹頭徹尾、見世物に終始したある種モンド映画的な作りだったが、本作はそこまで露悪趣味ではない。享楽的な今どきの若者が痛いしっぺ返しを食らうといった教訓も読み取れる。なんだかんだ言ってドラマ的にはよくまとまっていると思った。
監督・脚本はアメリカのインディペンデント映画界で活動し続ける異才ケヴィン・スミス。その独特の世界観は好き嫌いがはっきりと分かれるところであろう。
基本的にはナンセンスでブラックなコメディを得意とする作家であるが、中には「レッド・ステイト」(2011米)のようなシリアスな映画も撮ることがある。個人的には、この作家のセンスは割と好きな方である。
本作はどちらかというとオチも含め、その「レッド・ステイト」に近いシリアスさを併せ持ったコメディとなっている。傍から見れば冗談みたいな喜劇だが、ウォレスの身になって考えてみると実に残酷極まりない悲劇である。
人の不幸をネタにして人気者になったウォレスの不幸を可哀そうと見るか、ざまあみろと見るか。それは観る人それぞれの感じ方次第であろう。笑いと悲しみのこの微妙なラインこそ、ケヴィン・スミスの真骨頂という気がした。
一番笑ったのは、映画序盤のウォレスとハワードのやり取りだった。ハワードの真偽不明な自慢話や、明らかに何かを隠している彼の胡散臭さなどが、単なる会話劇以上のスリリングさを生み出していて面白く観れた。
また、車椅子のハワードが、終盤で”真実の姿”を見せたのにも爆笑してしまった。
尚、本作にはノンクレジットで、ある大物俳優が登場してくる。メイクをしているために全然分からなかったが、まさかこんなゲテモノ映画に出演していたとは…。本作には彼の実娘も出演しているので、めでたく父娘競演と相成った。