「メトロ42」(2012ロシア)
ジャンルアクション・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 通勤時間帯中のロシアの地下鉄に大量の川の水が流れ込む。現場を通過中だったメトロ42号の車両が洪水に巻きこまれ大パニックに陥ってしまう。乗客の中には医師のアンドレイと娘、そして妻イリーナの浮気相手であるヴラド、様々な人々がいた。彼らは協力して必死の脱出を試みるのだが…。
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(レビュー) 地下鉄の大洪水に巻き込まれた人々の必死の脱出劇を緊張感みなぎるタッチで描いたパニック映画。
物語のほとんどが地下鉄の中で展開され、しかも大量の水が使用されているので、撮影はかなり大変だったのではないだろうか。一部でCGは使用されているが、ほぼリアルな撮影が敢行されており、かなりの労作のように思う。
ロシアの地下鉄事情はよく分からないが、本作を観る限りかなり老朽化が進んでいるらしい。逃げ場のない地下で実際にこんなことが起きたら…と考えると非常に恐ろしくなってくる。日本では定期的に修繕されていればいいのだが…。
映画は序盤から軽快に進んでいく。主要人物の紹介は手際よく処理され、早々と事故が起こる瞬間をスリリングに描き中々の迫力が感じられた。
脱出劇を描く中盤からは、アンドレイと妻イリーナ、浮気相手であるヴラドの三角関係を軸にしながら、若いカップル、気弱なセールスマン、アル中の女性といった人々の脱出劇が描かれる。夫々の人間模様がドラマを面白く見せている。
ただ、脚本はかなり緩く作られており、せっかくのラストの感動もなんだかしらけてしまった。
第一に、夫に愛想をつかして他の男の元へ走ったイリーナの行動が疑問だらけである。娘を残していくのは母親の責任を果たしているとはいえず、それがラストのハッピーエンドを台無しにしてしまっている。
更に、ヴラドの口ぶりでは、イリーナの浮気相手は自分じゃなくて誰でも良かったようなことを言っている。そんなことを知らされた娘はどう思うのだろうか?イリーナと感動の再会を果たしても素直に喜べるはずはないだろう。ラストで涙を流してハグをしているが、本当にそれでよかったのか?とすら思える。
全体的にイリーナのキャラクター造形に不満が残った。
また、細かなことを言うと、若いカップルが喘息の吸入器を発見して抱擁するシーンが2回出てくるが、これも完全にシーンのダブりでストーリーを水っぽくしているだけであまり意味がない。
キャスト陣の熱演は良かったと思う。この手のパニック映画は演じる方も体力勝負のようなところがあり大変だと思う。どんどん疲弊していく中で、決して希望の灯を絶やさず前を向いて歩く彼らの姿には素直に感動を覚えた。