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午後8時の訪問者

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「午後8時の訪問者」(2016ベルギー仏)星3
ジャンルサスペンス・ジャンル社会派
(あらすじ)
 ジェニーは小さな診療所に勤めている有能な若き女医。ある晩、診療所の呼び鈴が鳴るが、診察時間外ということでドアを開けなかった。翌日、警察が来て、近くで身元不明の少女の遺体が見つかったことを知らされる。その少女は昨晩の彼女だった。罪悪感からジェニーは少女の写真を手に身元を突き止めようと聞き込みを始める。

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(レビュー)
 身元不明の少女の死の真相を追いかける女医をドキュメンタリックに描いた社会派サスペンス作品。

 監督、脚本はベルギーの名匠ダルデンヌ兄弟。持ち前のドキュメンタリズムな作風と、社会問題を照射した意欲的なテーマは今回も健在である。目をそらすことを許さない緊迫感に溢れた演出も素晴らしく、終始興味深く観れた。

 実際、ジェニーの必死の捜索から見えてくる移民問題の大きさは相当根深いものだということはよく分かる。
 例えば、ジェニーが訪ねた人々の反応は皆同じだ。移民少女の死という面倒な問題には関わりたくないという「空気」が社会全体に蔓延している。

 そして、診療所のドアを人間の心の扉のメタファーとして捉えるならば、ここで描かれている問題はどこの国にでも当てはまる普遍的なテーマに思えてくる。

 本作を観て「扉をたたく人」(2007米)という映画を思い出した。作品のテイストこそ違え、どちらも移民に対する差別をシリアスに捉えた極めて問題意識の高い作品だと言える。

 それにしても、ジェニーの勇気ある捜査には首が垂れる。亡くなった少女の関係者と思しき謎の男たちから脅迫を受けるのだが、普通の人であれば恐怖を感じて捜査を諦めるだろう。しかし、彼女の中では救えなかった少女に対する贖罪の意識が相当強かったのだろう。恐怖を感じながらも、聞き込みを続けるのだ。
 もし自分だったらどうだろう?と考えてしまう。おそらく彼女のような真似はできないように思う。

 ダルデンヌ兄弟の前作「サンドラの週末」(2014ベルギー仏伊)のサンドラもかなり意志の強いヒロインだったが、それとの共通性ら伺える。
 どうやらここ最近のダルデンヌ兄弟は強い女性をテーマにしているようである。

 ただ、テーマやメッセージは力強く発せられており、その点においては過去作品群と比べてもまったく見劣りしないのだが、ストーリーに関してはやや一本調子なので物足りない。ジェニーの周辺、特に彼女のプライベートにまつわる描写がほとんどないためキャラクターとしての魅力が今一つ出てこないという印象を持った。ジェニーの内面を深堀するよりも、今回は敢えてハードボイルド風に仕上げたかったのかもしれない。
[ 2021/02/27 00:04 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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