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父の秘密

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「父の秘密」(2012メキシコ)星3
ジャンル青春ドラマ・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 母を交通事故で亡くしたアレハンドラは、父ロベルトと新天地でやり直そうとメキシコ・シティに移り住む。アレハンドラは新しい学校でクラスメイトと打ち解けていくが、ひとつの事件をきっかけに激しいイジメの対象になってしまう。ロベルトは、そんな娘の異変に気づくことができず…。

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(レビュー)
 母を亡くした少女の孤独と、それに気付いてやれなかった父親の苦しい胸の内をシリアスに綴った人間ドラマ。

 いわゆるイジメ問題を題材にした物語だが、本作は父と娘のすれ違いを描く家族の物語でもある。アレハンドラとロベルトの間には厚い壁がある。その原因は後になって分かるのだが、そこを想像しながら観ていくと、このドラマは非常に入り込みやすいと思う。

 しかして、最終的に父親は”ある行動”に出るのだが、これは衝撃的だった。法的、倫理的には決して許されない行為である。しかし、そうせざるを得なかった彼の心境もよく分かる。

 アレハンドラが学校のいじめをロベルトに隠しているので、観ている最中は「父の秘密」ではなく「娘の秘密」ではないか…と思っていたのだが、なるほど。この衝撃のラストを見て「父の秘密」というタイトルに納得できた。

 映画は、最初から最後まで余計なセリフやBGMを排したロングテイクが続く。まるでその現場を目撃しているかのようなドキュメンタリータッチが全編にわたって貫かれ並々ならぬ緊張感が味わえた。
 物語自体は至極シンプルである。しかし、じっくりと腰を据えた演出によって、アレハンドラとロベルトの苦悩がこちら側によく伝わってきた。
 ただ、決して観客に対して親切な作品とは言い難い。根気強く観てあげないと、この映画は一体何について描いているのか?といった感じで途中で脱落してしまうかもしれない。

 例えば、冒頭の車中のシーンは、初見だけでは一体何が起こっているのかよく分からないシーンである。しかし、物語が進むにつれてようやくその意味が分かってくるようになる。
 母の交通事故の原因も然り。明確にセリフで説明されておらず、ある程度想像しながら観ていかなければならない。もちろんその原因は終盤で判明するのだが、そこに至るまで興味を維持できるかどうかが問題である。

 このようにこの映画は、観客の集中力が試される作品とも言える。振り落とされないように根気強く見て行かなければならない。

 印象に残ったのは、先述した衝撃のラストシーン以外に、イジメのシーンも相当強烈で脳裏に焼き付いた。正直、ビジュアル的にはそこまでの凄惨さはないのだが、かなり粘着的に描かれているので大変嫌な気持ちにさせられた。だからこそ、このドラマに説得力が生まれているとも言えるのだが、しかし観てて決して気持ちの良いものではなかった。

 そんなイジメに堪えていたアレハンドラは相当タフである。そこには母親の死が関係していたのだろう。あるいは、彼女なりの贖罪の意味があったのかもしれない。実に憐れな少女で見てて辛かった。
[ 2021/03/20 00:35 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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