「裸足の季節」(2015仏トルコ独)
ジャンル青春ドラマ・ジャンル社会派
(あらすじ) 黒海沿岸の小さな村。13歳のラーレは、美しい5人姉妹の末っ子。10年前に両親を事故で亡くし、姉妹たちは祖母と叔父が暮らす家に身を寄せていた。ある日、姉妹たちは学校帰りに男子生徒と海で騎馬戦をして無邪気に遊んだ。しかし、それを祖母に知られて”はしたない”と激しく叱られる。そんな中、ただ一人ラーレだけは反抗したため、罰として外出を禁じられてしまう。
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(レビュー) 古い因習にとらわれた5人姉妹の自律を瑞々しい映像とともに綴った社会派青春映画。
トルコの小さな村を舞台にした物語は、我々日本人には余り馴染みがないかもしれない。しかし、古くは日本でもこうした因習や村のしきたり、封建的な社会は存在していた。「箱入り娘」なんていう言葉もあるくらいで、不順異性交遊はご法度。親同士が決めた相手と結婚させられる…なんてことが現実にあったのだ。
この映画で描かれるラーレを中心とした5人姉妹も、正に祖母と叔父に縛られて、決められた相手との結婚を強要される。末っ子のラーレは、そんな姉たちの不幸を見て反抗していく。
物語はシンプルながら軽快に展開されていくので最後まで面白く観ることができた。
確かに隠滅としたドラマではあるのだが、随所にユーモアが巧みに配されているので親近感を持ってみることができる。
例えば、嫁いだ長女が実は処女でなかったことが判明し両家がパニックに陥るシーンは、当人たちからしてみれば深刻な問題だろうが、どこか笑えてしまうのも事実である。悲喜劇の両面を表したエピソードで味わい深い。
物語のキーマンとして登場してくるトラック運転手の青年もドラマにユーモアを与えていた。彼はラーレたちの反抗を助ける”ナイト”のような立ち回りを見せる。ややご都合主義すぎる気がしないでもないが、その存在は実に頼もしく感じられた。
また、本作は映像もとにかく美しい。ドラマの陰惨さとは打って変わって、いたるところに煌びやかな映像が横溢する。
例えば、姉妹はサッカーが大好きで町に観戦しに行くために、祖母に内緒でこっそりと家を出ていく。夕陽をバックに和気あいあいとサッカー場へ向かう彼女たちの姿は、如何にも青春映画然とした瑞々しい映像で甘酸っぱい感傷に浸れた。
あるいは、序盤の海辺のシーン。美しい大海原をバックに男子生徒と戯れる姿も解放感に満ちていて実に素晴らしかった。
透明感に溢れた5人姉妹のフォトジェニックな映像が随所に登場し、ある種アイドル映画的な趣も感じられる。
監督はこれが初長編となる新人女性監督ということである。美しい映像へのこだわりは、ちょうどソフィア・コッポラ監督の「ヴァージン・スーサイズ」(1999米)を連想させる。あれも女流監督ならではの、透明感あふれる美しい映像が印象的であった。
クライマックスにかけてのドラマの盛り上げ方、伏線と回収を巧みに絡ませたオチも気持ちよく観ることができた。すべてを描かないのでスッキリしないという人もいるかもしれないが、個人的には余韻を引く終わり方で良かったと思う。