「20センチュリー・ウーマン」(2016米)
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 1979年、シングルマザーのドロシアは15歳の息子ジェイミーと暮らしていた。家には他に、子宮頸がんを患うパンクな写真家アビー、元ヒッピーの便利屋ウィリアムも居候していた。ジェイミーにはジュリーというガールフレンドがいたが、中々一線を越えられず苛立ちを覚えていた。ジェイミーは次第に反抗期を迎えドロシアの手を焼かせていくようになる。ドロシアはアビーとジュリーに息子の教育係になってほしいと相談するのだが…。
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(レビュー) シングルマザーと思春期の息子の関係を周囲の人間模様を交えて描いたヒューマン・ドラマ。
監督、脚本は
「サムサッカー」(2005米)、
「人生はビギナーズ」(2010米)のマイク・ミルズ。人間の孤独と人生の悲喜こもごもをさりげなく描く才人である。今回もその資質は存分に発揮されている。
面白いと思ったのは、ドロシアとアビーとジェイミー、3人の女性の立場を母性という観点から明確にキャラクリゼーションした点だ。
ドロシアはシングルマザー。アビーは子宮頸がんによって母になれない女性。ジェイミーは奔放に男友達を渡り歩く未熟な少女。こんなふうに分けられる。
そんな彼女たちのやり取りは本作の妙味の一つになっている。中でも、アビーが病気のことをドロシアに相談するシーンは白眉であった。母親になれない彼女の悲しみが痛々しいほど伝わってきた。
女性陣が目立つ映画であるが、居候の便利屋ウィリアムもユーモア担当という立ち位置で中々の存在感を発揮している。アビーと肉体関係に及ぶなど、彼は基本的に来る者は拒まず、誰とでも寝る男である。いかにもヒッピー文化の洗礼を受けてきたおじさんという感じだが、そんな彼はドロシアの良き相談相手になっていく。そして、ある時ついに彼女にキスを迫るのだ。ところが、軽く一蹴されて落胆してしまう。ドロシアの方が完全に上手で、この辺りにはクスリとさせられた。
このように本作は母子のドラマがメインなのだが、周囲に集う人間模様も大変魅力的に描けていて、ある種群像劇的な楽しみ方もできる作品となっている。多彩な人物の捌き方には「サムサッカー」同様、マイク・ミルズの才覚が伺える。
もちろんメインであるドロシアとジェイミーの関係を描くドラマも抜かりはない。子育ての難しさに悩む母の葛藤を丁寧に描写していて見応えを感じた。
ただ、タイトルの「20センチュリー・ウーマン」(邦題は原題そのまま)には今一つピンとこなかった。物語は1979年という特定の時代を背景にしており、掲げられたお題目とは程遠いドラマである。
キャストではドロシアを演じたアネット・ベニングの妙演が印象に残った。若い頃からコメディやシリアスをまたにかけて活躍していた実力派だが、最近では
「キッズ・オールライト」(2010米)など一癖持った母親役がしっくりとくる女優になってきた。今後もますます活躍の場を広げていくのではないかと期待せずにいられない。