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5時から7時までのクレオ

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「5時から7時までのクレオ」(1961仏)star4.gif
ジャンルロマンス
(あらすじ)
 シャンソン歌手のクレオは、病院で癌の検査を受診した。検査結果が出るまでの間、彼女は占い師に占ってもらった。ますます不安な気持ちに駆られた彼女は恋人や友人に会いに行くが、彼らの無神経な態度に苛立つばかりだった。そんな彼女の前に一人の青年が現れる。

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(レビュー)
 癌の不安を抱えた女性歌手の姿をスタイリッシュに描いた作品。

 監督、脚本はアニエス・ヴァルダ。本作は「ラ・ポワント・クールト」(1955仏)に続く彼女の長編映画2作目である。
 型に捉われない演出は実にラディカルで、『ヌーヴェルヴァーグの祖母』と言われたアニエスの才能が堪能できる。ヌーヴェルヴァーグ初期時代の代表作「勝手にしやがれ」(1959仏)と並び評されて然るべき意欲作と言えよう。

 映画は、約2時間にわたってクレオの姿をほぼリアルタイムで切り取っていく。クライマックスの一点集中なドラマは食い足りなさもあるが、先述したように今作はユニークな演出を楽しむべき作品であろう。

 冒頭のカラーとモノクロを対比したカットバック演出、クレオが乗った車窓から捉えたパリの大通りの映像、通行人たちの活き活きとしたクローズアップ等、定理にとらわれない瑞々しいセンスが至る所で炸裂している。ゲリラ撮影なのか、背景の一般人がカメラの方を向いてもお構いなしである。ライヴ感を優先させた撮影が印象的だ。

 その反対に、後半の映画館で流れるサイレント映画には、ヴァルダの遊び心溢れる演出術が堪能できる。ここは撮りおろしの劇中劇になっていて、かのチャップリンも顔負けの小粋な恋愛小品となっている。尚、このサイレント映画にはゴダールと彼のミューズであるアンナ・カリーナが出演している。

 本作には、他にも多彩な才能が集結していて、音楽はミシェル・ルグランが担当しており、本人が作曲家役として即興でピアノの演奏を披露している。

 ラストも実に印象的な終わり方で余韻を引く。死の不安からの解放と生きる意志が力強く表明されており、観終わった後に清々しい気持ちになった。
 尚、ここで登場する青年との間には恋の予感を期待してしまうが、彼はアルジェリア戦線に赴く道程にある。したがって、必ずしも生きて帰ってくる保証はなく、いくばくかの苦味をもたらして完結している。そこがこのドラマを一層味わい深いものにしていて良い。
[ 2021/05/09 00:37 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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