fc2ブログ










みじかくも美しく燃え


「みじかくも美しく燃え」(1967スペイン)星3
ジャンルロマンス
(あらすじ)
 妻子ある伯爵のスパーレ中尉はサーカスの綱渡り芸人エルヴィラと禁断の恋に落ちる。二人は全てのしがらみを捨てて、あてどない旅に出た。やがて暮らしが困窮してくると木イチゴや椎茸を採取して飢えをしのぐ暮らしを強いられるようになる。その頃、二人の手配書が至る所に出回り…。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 何と言うことはない世間知らずな男女の駆け落ちのドラマだが、映像がとにかく素晴らしい。一つ一つのカットが実に洗練されていて、それを観るだけでも十分に鑑賞に値する作品だと思う。

 特に、美しい田園風景の数々が印象に残った。二人が並んで歩いてるだけで絵になるのだから、正にロケーションの勝利であろう。

 思い出されるのがテレンス・マリックの映像叙事詩「天国の日々」(1978米)である。名手ネストール・アルメンドロスが切り取った映像美が印象深い作品だったが、この作品はいわゆるマジック・アワーにこだわった映画ということで語り継がれている。そこで見られるようなマジック・アワーこそないものの、本作の自然光を取り入れた風景描写はそれとは対照的な美しさで魅了される。

 撮影監督はヨルゲン・ペルソン。P・アウグスト監督作「愛の風景」(1992スウェーデンデンマーク仏独伊英ノルウェーフィンランドアイスランド)、「愛と精霊の家」(1993独デンマークポルトガル)や、ラッセ・ハルストレム監督作「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」(1985スウェーデン)といった秀作を撮ったカメラマンである。実績のある氏の功績が本作でも如何なく発揮されている。

 また、本作はウルヴィアを演じたピア・デゲルマルクの美しさも必見である。ヨーロッパ的な正統派美少女といった顔立ちで印象的である。残念ながら本作で映画主演デビューを果たしたのちに3本の映画と1本のテレビシリーズを残して引退してしまったが、逆に言うとその短いキャリアの中で彼女は女優人生を駆け抜けた…という言い方もできる。その煌めきを確かめることができる本作は大変貴重であろう。

 正直、映像やキャストの素晴らしさを除けば、映画の出来としては平凡だと思う。演出は少女漫画的な稚拙さを感じる部分がある。
 例えば、喧嘩した二人が仲直りするシーンはこうだ。スパーレが謝罪の言葉を記したメッセージを川に流して下流のエルヴィラがそれを受け取る…といった具合である。

 物語も、こういってしまうと身も蓋もないが、貴族の坊ちゃんと世間知らずなサーカス小屋のお嬢ちゃんが後先考えずに衝動的に駆け落ちする。ただそれだけの話である。古い時代の物語とはいえ余りにも能天気なドラマであると言わざるを得ない。

 しかし、観終わった後に知ったのだが、何とこの物語は実話の映画化だそうである。実際の事件は1889年にスウェーデンで起こっており、それを元にして本作は作られたというから驚きである。

 考えてみれば近松門左衛門の「曾根崎心中」も実話を元にした浄瑠璃だったわけで、国は違えど古い時代にはこういうことが結構ざらにあったのかもしれない。現代の感覚では余り考えられないことだが、これも時代だろう。
[ 2021/05/12 00:55 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/1937-1af807f7