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フェイ・グリム


「フェイ・グリム」(2006米独仏)星3
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 シングルマザー、フェイの前に、ある日突然CIAのエージェントを名乗る男フルブライトが現れる。行方不明の夫ヘンリーはすでに死亡しており遺品である手記を引き取るためにフランスに飛んで欲しいと言われる。その手記には国家の安全保障に関わる重大機密が書かれているというのだが…。
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(レビュー)
 平凡なシングルマザーが国際的なスパイ戦争に巻き込まれていく異色のサスペンス映画。

 ニューヨークのインディペンデント界で活躍するハル・ハートリー監督の初期時代の傑作「ヘンリー・フール」(1997米)の9年ぶりの続編である。尚、この後に第3作にして最終章となる「ネッド・ライフル」(2014米)が製作されている。

 「ヘンリー・フール」は、うだつの上がらない青年サイモンと謎の放浪者ヘンリーの友情をしみじみと綴ったドラマで、ハル・ハートリーの独特のユーモア・センスが散りばめられた傑作だった。カンヌ国際映画祭でも高く評価され脚本賞に輝きハートリー監督の名前を一気に世に広めた。本作はそこから直結する続編である。

 正直、自分は前作を大分昔に観たきりなので、かなり内容を忘れていた。そのため本作を観る前に、設定だけを頭に入れて鑑賞した。それだけでも今回の物語は十分に面白く観ることができたので、最低限前作までの流れを押さえたうえで鑑賞したほうが良いだろう。できれば前作を観たうえで鑑賞すれば尚良しである。

 それにしても、まさか国際的なスパイ映画になっているとは予想外であった。前作のヒューマンドラマとは全く毛色が異なる作風である。

 とはいえ、そこはハル・ハートリー作品である。凡庸なエンタテインメントとは一線を画す独特のテイストとなっている。
 例えば、テロリストや殺し屋など様々な登場人物が出てくるが、彼らはどこか間が抜けていてコメディ調に造形されている。そもそもヘンリーの手記に国際的な機密情報が書かれているということ自体、人を食っているとしか言いようがない。前作でもヘンリーは謎多きキャラだったが、この9年の間にまさか国際社会を揺るがすような人物になっていたとは…。

 ともかく、物語は彼の妻フェイがCIAの特命を受けて、件の手記を取り戻すためにフランスに飛ぶ…というストーリーになっている。そこには別れたヘンリーを追い求める彼女の恋慕も投影されており、何だかんだと言いながら最終的にはフェイとヘンリーのロマンスに昇華されていくあたりは流石である。

 今回もハートリー監督らしいスタイリッシュな映像演出が幾つか見られる。特に、クライマックスシーンは畳みかけるようなカットバック演出によってドラマのボルテージがうまく盛り上げられており、これには興奮させられた。

 尚、この「ヘンリー三部作」は劇中の物語と製作された時代が同調している特殊な作りになっている。
 同じようにインディペンデントから出てきたR・リンクレイター監督も、俳優のイーサン・ホークとジュリー・デルピーと9年ごとに「ビフォア」シリーズを製作している。こういう撮影形態は中々珍しい。撮影するにあたっては色々と苦労が絶えないだろう。そういう意味では、「ビフォア~」も「ヘンリー三部作」も企画の段階から相当の意気込みがなければ作れないシリーズである。
[ 2021/06/02 00:39 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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