「ネッド・ライフル」(2014米)
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 父ヘンリーは行方不明で母フェイは国際テロリストとして収監されてしまった息子ネッド。18歳になった彼は家族に不幸をもたらした元凶である父への復讐を胸に、彼を探す旅へ出る。途中で年上の文学女子スーザンと出会い、ヘンリー探しの旅に半ば強引に同行してもらうのだが…。
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(レビュー) ハル・ハートリー監督の「ヘンリー・フール」3部作の完結編。
今回は成長した息子ネッドが父ヘンリーに復讐するために旅をする…という物語である。
第1作「ヘンリー・フール」(1997米)は父の物語。第2作
「フェイ・グリム」(2006米独仏)は母の物語。そしてこの第3作は息子の物語となっている。
こうして3作品並べてみると、家族のドラマとして見事に完結していることがよく分かる。果たして、第1作の時点でこの三部作が構想されていたかどうかは分からない。しかし、約9年おきに製作されてきたこのシリーズは、大げさな言い方をすると、ある家族の大河を描いたドラマだったことに気付かされる。第2作がスパイ映画のようになってしまったのは、いささかシリーズの世界観の枠からはみ出た感がしなくもないが、それでも最終的には見事に家族のドラマへと着地させたあたりは流石である。
ハートリー監督の演出もスタイリッシュ且つファッショナブルで、ビジュアルに対するこだわりは相変わらず健在である。
特に、ネッドとスーザンのかすかな恋慕が、時に瑞々しく、時にスリリングに活写されており、このセンスはどこかヌーヴェルヴァーグを思わせる。明らかに意識してのことだろう。
クライマックスにも引き込まれた。かなりあっけない感じも受けるが、このスマートさは逆に物語の結末に深い余韻を残す。
キャストではネッドを演じたリアム・エイケンが印象に残った。「ヘンリーフール」から実に17年の歳月が流れ、すっかり立派な青年に成長している。その姿を見るとなんだか感慨深いものがこみあげてくる。