「サボテンの花」(1969米)
ジャンルロマンス・ジャンルコメディ
(あらすじ) 独身主義のプレイボーイ、ジュリアンは結婚していると嘘をついてトニーという女性とつき合っていた。ある日、トニーの自殺騒ぎから真剣に彼女との結婚を考えるようになる。そこでジュリアンは、生真面目なオールドミスの看護婦ステファニーに自分の妻を演じてもらいトニーとの結婚話を進めようとするのだが…。
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(レビュー) 独身貴族の歯科医と恋人、看護師の三角関係を軽妙洒脱な会話で綴ったロマンチック・コメディ。
テンポの良いセリフ回し、際立ったキャラクター造形、先の読めない展開、キャストの妙演。どれをとっても一級品の出来映えで、古い作品でありながら今観ても十分に楽しめる作品である。
唯一、シックリこなかったのは序盤で自殺未遂を起こしたトニーがあっさりとジュリアンを諦めてしまったことである。ジュリアンの妻に成りすましたステファニーの登場で身を引くのだが、激情型なトニーにしてはいささか聞き分けが良すぎるという気がしてしまった。
それにしても本作は脚本が良く出来ている。
脚本はB・ワイルダー作品でお馴染みのI・A・L・ダイヤモンドであるからして、クオリティの方は保証済みである。洗練されたダイアローグの応酬と無駄のない物語構成で、ジュリアン、トニー、ステファニー、三者三様の思惑を軽快に表現している。
また、キャラクター造形にも上手さを感じた。ジュリアンの裏工作を知らずに殊勝に振る舞うトニーの健気さが愛らしく、素直に感情移入してしまう。
言い寄る患者を袖に振るステファニーは”軍曹”と呼ばれる生真面目な中年女性で、コメディライクに造形されている。夜のディスコで普段は見せないような激しい動きでダンスに夢中になる姿は傑作だった。
ちなみに、このディスコのシーンでは、患者のハーベイが登場してきてジュリアンとトニー、ステファニーとハーベイという二組のカップルによるWデートに発展する。思わぬ飛び入り参加ということで、これも可笑しかった。
キャスト陣の妙演も素晴らしい。
ジュリアンを演じたW・マッソーはこの手のコメディはお手の物と言った感じで安定感がある。
ステファニーを演じたI・バーグマンは相変わらずの芸達者ぶりである。シリアスもできれば、こうしたコメディも中々板についている。
そして、トニー役を演じたゴールディ・ホーンも、デビュー間もないということもあり瑞々しい演技を披露している。本作で見事にオスカーを受賞し、以降はこの手のロマコメを得意分野としていくようになる。