「ピクニック」(1936仏)
ジャンルロマンス・ジャンル古典
(あらすじ) 結婚を控えた娘アンリエットとその家族が、パリから馬車で田舎町へとピクニックにやってきた。その姿を遠巻きに眺めていた地元の青年ロドルフとアンリは、都会の女性たちとひと時の恋を楽しもうと、アンリエットと彼女の母親を舟遊びに誘うのだが…。
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(レビュー) ある一家のピクニック風景を美しい映像で綴った中編作品。
モーパッサンの小説を巨匠J・ルノワールが監督、共同脚本を務めて撮り上げた珠玉の映像作品である。
何と言っても特筆すべきは、田園風景を捉えた美しい映像の数々だろう。ルノワールの父は、言わずと知れた印象派の画家ピエール=オーギュスト・ルノワールである。その父が描いた印象絵画を思わせるような美しい映像の数々に心奪われる。
特に映画序盤、ロドルフとアンリがカフェの窓を開け放つシーン。窓の向こう側からアンリエットたち一家の戯れる姿が登場してくる瞬間は、正にスクリーンの”開幕”を思わせるような絢爛さに溢れていて印象に残った。目に飛び込んでくる…とは正にこのことだろう。一気に画面の中に引き込まれてしまった。
川を舟で下る映像、陽光が差し込む森の中での男女の戯れる映像等。これらも製作された時代を考えると奇跡的な美しさと言って良いだろう。
一方、物語はいたってシンプルである。何せ40分程度の中編なのでそれほどドラマ的なうねりは認められない。
しかし、ロドルフとアンリが夫々にアンリエットと母親をナンパするが、いつの間にかパートナーが入れ替わってしまう所にはユーモアを感じるし、終盤で物語が数年後にジャンプすることでもたらされる切なさは中々に感動的である。更に言えば、ナンパの駆け引き、スリリングさも濃密に味わえる。
尚、本作は完成する前に大戦が勃発し、監督のJ・ルノワールは亡命してしまったためお蔵入りとなってしまった。それを当時のプロデューサー、助監督だったJ・ベッケルらの手によって完成にこぎつけたという経緯を持っている。なぜルノワール自身が本作の完成に携わらなかったのかは不明だが、こうして日の目を見ることができたのは幸福なことである。