「ババドック 暗闇の魔物」(2014豪)
ジャンルホラー
(あらすじ) アメリアは事故で夫を亡くし息子のサミュエルと2人で暮らしていた。サミュエルは学校で度々問題を起こし彼女の手を焼かせていた。そんなある夜、サミュエルがアメリアに読んで欲しいと1冊の絵本を持ってくる。“ババドック”なるその絵本はどこか薄気味の悪い絵本であった。それ以来、2人の周囲で次々と奇怪な現象が起こるようになる。
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(レビュー) 不気味な絵本を読み聞かせたことをきっかけに恐怖の体験をしていく母子の姿をダークなタッチで描いたホラー映画。
サミュエルは絵本に出てくる不気味な怪物ババドックが実在するという。元々彼は問題の多い子で、また嘘をついているのだろうとアメリアは軽く考えて相手にしなかった。ところが…である。翌日から次々と身の回りに不気味な現象が起こるようになり、アメリアは気味悪がってその絵本を焼き捨ててしまう。これで平和が戻るだろうと思いきや、さにあらず。何と焼き捨てたはずの絵本が戻ってくるのだ。この映画で一番ゾッとしたのはこのシーンだった。
物語は終盤になると、ババドックの正体も露わになり、ある種モンスター映画的なノリになっていく。アメリアたちはこの怪物と戦っていくことになるのだが、このあたりはスペクタクル感も増して中々上手く盛り上げられていると思った。
ラストも余韻を引く終わり方で良かった。
このラストから分かることは、本作はただのホラー映画ではないということだ。一見するとババドックという謎の怪物に襲われる母子の恐怖を描いた作品に見えるが、そうではない。実はこれは父親がいなくなって孤独に陥る母子に与えられた試練のドラマだったということがよく分かる。
このババドックとはいったい何だったのだろうか?映画を観終わってもその正体は明確にされない。
ここからは自分なりの解釈であるが、ババドックはサミュエルの想像が具現化した怪物だったのではないだろうか。その怪物はつまりサミュエルの負の感情である。アメリアはそれを取り払おうと格闘し最終的には元の仲の良い母子に戻る…というのが本作の趣旨のように思った。
監督、脚本はジェニファー・ケント。元々はL・V・トリアー監督の「ドッグヴィル」(2003デンマーク)で助監督を務めた経験があるそうである。とはいえ、トリアーとは全く異なる映像タッチで、いわゆるハリウッド的なスタイリッシュな演出でグイグイと引っ張るタイプの作家のように思った。本作が彼女の長編監督デビュー作ということで今後が楽しみである。
キャストではアメリアを演じた女優の熱演が印象に残った。熱量高目な演技はクライマックスを大いに盛り上げている。