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オリ・マキの人生で最も幸せな日

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「オリ・マキの人生で最も幸せな日」(2016フィンランド独スウェーデン)星3
ジャンルロマンス・ジャンルスポーツ
(あらすじ)
 1962年のヘルシンキ。オリ・マキはフィンランドで初めて開催されるボクシングの世界タイトルマッチに挑戦することになった。試合の日が迫る中、彼はライヤという女性に出会い恋に落ちる。

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(レビュー)
 世界タイトル戦に挑む孤独なボクサーの葛藤を16ミリのモノクロ映像で静謐に綴った作品。実話の映画化である。

 オリ・マキというボクサーのことを全く知らずに鑑賞した。実際に彼がこの映画で描かれていたような人物だったのかどうかは分からないが、かなり変わった男だと思った。

 国で初めて行われる世界タイトルマッチに挑戦するのだから相当なプレッシャーがかかったのは分かる。取材陣には付きまとわれるし、人前ではしたくもない作り笑いをしなくてはならないし、それだけで相当なストレスがかかる。それは十分に理解できるのだが、だからと言って試合の練習そっちのけでライヤの元へ走るのはプロとしてどうだろう?と思ってしまった。

 ボクシングの試合は興行である。世界タイトル戦ともなれば、多くの金と人間が関わってくるし多方面に大きな影響を及ぼすことになる。それらを自分の我がままで全て台無しにしてしまっていいのだろうか。自分などにはちょっと理解しがたかった。
 確かに彼は自分に正直生きた男なのかもしれないが、それと引き換えに大きなものも手放してしまった。なんて馬鹿な男…。そんな感想しか出てこなかった。

 ただ、世間や巨大な組織に真っ向から抗ったアウトローであることは間違いない。感情移入はできなかったが、彼が辿ってきた人生は確かにドラマチックで、こうして映画化されるのも分かるような気がした。

 監督は本作が長編デビュー作の新人監督らしい。同じフィンランド出身というとA・カウリスマキというベテラン作家が思い出されるが、この監督も演出のタッチはとても似ていると思った。オフビートで静謐で淡々と紡ぐ手法は、明らかにカウリスマキ風である。

 また、夜のナイトクラブでオリ・マキが目撃する”水槽ショー”には、この監督の独特のセンスが感じられた。客からボールを投げつけられた踊り子が巨大な水槽に落ちるというショーなのだが、それを見てオリ・マキはいたたまれない表情を見せる。おそらく惨めに水槽に落ちた女を見て、マスコミや大衆の餌食になる今の自分を重ねたのだろう。ある種D・リンチ的な悪夢感と言えばいいだろうか。それが妙に印象に残った。
[ 2021/07/10 00:04 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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