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屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ

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「屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ」(2019独)星3
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 1970年代のハンブルク。安アパートの屋根裏に暮らす孤独な中年男フリッツ・ホンカは、夜な夜なバーに繰り出しては酒をあおり、目を付けた女に声をかけて自宅に招き入れて殺害していた。そんなある日、彼の前に美しい少女が現れ…。

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(レビュー)
 1970年代にドイツに実在した連続殺人鬼フリッツ・ホンカの実像に迫った犯罪ドラマ。

 映画はいきなりホンカが女性の死体を切り刻むシーンから始まる。相手が誰なのかさっぱり分からず度肝を抜かされるが、要はこの連続殺人鬼は何か理由があって人を殺しているわけではない。ただ単にむしゃくしゃしたから相手を殺すのであって、そこに理由や動機は一切ないのだ。快楽殺人というわけでもないし、極めて思考が屈折した偏執的狂人という感じがして大変気味が悪かった。

 ただ、ホンカの置かれてる状況を考えてみると、どうしてここまで屈折した人間になってしまったのか?その理由は何となく想像できた。

 貧困生活や容姿に対するコンプレックス。何の希望も持てない孤独な中年男の憐れさはどこか物悲しい。しかも中年娼婦にしか相手にされないというのも惨めである。出口の見えない鬱屈した生活がこれからもずっと続くと考えると、自暴自棄になってしまうのは無理もないない話である。彼が意味もなく殺人を繰り返す背景にはこうし心理が働いているからであろう。だからと言って、彼がやっていることを擁護することはできないが、非常に気の毒な男だと思った。

 本作を観ていると、何となく現代の格差社会、高齢化社会について考えさせられてしまう。決してダイレクトにそうしたメッセージが発せられているわけではないが、ホンカを取り巻く社会的状況から現代の閉塞感が透けて見えてくるのが興味深い。

 監督、脚本はファティ・アキン。「女は二度決断する」(2017独)「そして、私たちは愛に帰る」(2001独トルコ)等、主に社会派的なテーマを描く作家だが、そんな彼がこの連続殺人鬼を題材に取り上げたことは意外である。
 ただ、先述したようにホンカの置かれているバックストーリーを考えてみると、もしかしたらファティ・アキンは事件そのものよりも、事件が起こった社会的土壌を描こうとしたのではないか…そんな風に想像できる。やはり彼は生粋の社会派な作家なのだ。

 キャストでは、ホンカを演じたヨナス・ダスラーの怪演が印象に残った。初見の俳優だが、実はまだ若いイケメン青年であることを後で知り驚いた。今回は特殊メイクを施して醜悪な中年男を堂々と体現している。R15+作品ということで性的な描写も多く、この役を引き受けた所に彼の役者としての気概を感じた。今後どういった役に挑戦していくのか、注目していきたい。
[ 2021/07/25 00:37 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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