「SOSタイタニック/忘れえぬ夜」(1958英)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 1912年、豪華客船タイタニックがイギリスからニューヨークに向けて出港した。ところが、その航海中に巨大な氷山に接触し船体が破損してしまう。大量の海水が浸水し乗客たちは決死の脱出を試みるのだが…。
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(レビュー) 有名なタイタニック号の悲劇をドキュメンタリータッチで描いたパニック映画。
J・キャメロン監督の「タイタニック」(1997米)を先に観ていた自分からすると、本作に出てくるシーンの幾つかは「タイタニック」の元ネタだった…ということに驚かされる。
氷山との衝突のシーンに始まり、浸水する中で覚悟を決めて抱擁する老夫婦。3等客室に取り残され暴動を起こす人々、女性と子供を押しのけて救命ボートに乗り込む会社重役等々。いずれもキャメロンの「タイタニック」で見た覚えがある。まさかここまで似たようなシーンが多いとは思わなかった。
もちろん両作品とも事故当日の状況を詳細にリサーチしたうえで製作しているのだから、似てしまうのは仕方がないことだと思う。どちらも真摯に作っているのだろう。しかし、カット割りや画面構図まで同じ個所があるのは流石に苦笑するしかない。
ただ、キャメロンの「タイタニック」は貧富の差を乗り越えて結ばれる男女の儚いロマンスがテーマだったのに対して、本作はあくまで事故の悲劇性そのものを描こうとしているように思った。そのため本作には確たる主人公は存在せずドラマも散漫で、どちらかと言うとドキュメンタリーに近い作りになっている。後半からライトラー航海士の活躍が描かれ、ようやくドラマを語る支柱が定まったという感じがしたが、それでも観終わった感想は何だか味気ない。
キャメロン版の「タイタニック」と違う点はもう一つある。それは遭難したタイタニックを外から見るという客観的視点を用意したことである。タイタニックの事故現場から15キロ先で航行中だったカリフォルニアン号。それとタイタニックからの救難信号を受けて救助に向かったカルパチア号。この2隻からの視点が作中には登場してくる。夫々の事故に対する対処の相違は印象に残った。
パニック・シーンは古い映画ということもあり、今の時代の映画に比べると迫力には欠けてしまう。ただ時代を考えればよく出来ている方だと思う。少なくともこれより後に作られたB級映画よりも特撮の出来は全然良い。