「映画大好きポンポさん」(2020日)
ジャンルアニメ・ジャンル青春ドラマ
(あらすじ) 映画の都ニャリウッドで活躍する映画プロデューサーのポンポさん。彼女のもとで製作アシスタントとして働く青年ジーンは、内気な性格のせいで映画監督になる夢をあきらめかけていた。そんなある日、ポンポさんに15秒の予告編制作を任されるのだが…。
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(レビュー) 映画製作に情熱を傾ける青年のひたむきな姿を周囲の人間模様を交えて描いたアニメーション作品。同名コミックの映画化である。
原作は少しだけ読んだことがあるが、失礼ながらこのような形で映画化されるとは思ってもみなかった。発行部数何百万部というようなメジャーな大ヒット漫画というわけではない。中身も映画製作の舞台裏ということで、人を選ぶ内容である。映画好きな自分にとっては興味深く観れたが、果たしてどれだけの層に本作が受け入れられるか甚だ疑問である。劇場まで足を運ぶのは、きっとコアなファンくらいではないだろうか。
とはいえ、本作の成り立ちを考えると、かなりの労作とも言える。そのあたりのことは
wikiに書かれているので一読されたし。ここまで来るのに山あり谷ありだったようである。
物語は序盤からテンポよく展開されている。ポンポさんに新作映画の監督に抜擢されたジーンは、新人女優ナタリーと共に映画製作に邁進していく。
非常にポジティブな内容なのでさわやかな感動が味わえた。現実にはここまで上手くいくはずがないと分かっていても、夢とロマンがどこかにあって欲しいと願うのも人情である。夢の都ハリウッドをもじったであろうニャリウッドを舞台にしていることからも、そのあたりは作り手側も狙ってやっているのであろう。敢えてベタにサクセス・ストーリーを構築しており、そこに”こそばゆさ”を覚えつつも、微笑ましさも感じた。
そして、この映画は映画製作の悲喜こもごもを描くドラマ以外に、もう一つのドラマを用意している。それがアランとジーンの友情だ。後から知ったが、アランというキャラクターは今回の映画のために作られたオリジナルキャラということである。このアランは物語に程よいスパイスを利かせていている。
彼はジーンと同じハイスクールで輝かしい青春時代を送ったイケメンである。ところが、社会に出てからは全く不本意な人生を送っている。そんな彼がジーンと再会することで、彼の人生も変化していく。その友情が本作を味わい深いものにしている。
もちろん撮影現場でのアクシデントや編集作業での躓きといった製作過程も興味深く観れた。
確かに監督にとって編集作業は楽しくもあり苦しくもあろう。シビアなことを言えば、編集作業に監督自身が携わるようなケースは、今のハリウッドではありえないだろうが、ある種ファンタジーとして成立している今作において、この編集の困難さは尋常ではないほどヘビーに突き詰められており、そこに製作サイドの”こだわり”が感じられた。
つまるところ、映画=人生と見立てれば”編集”という作業は、自分の信念と他の事情と折り合いをつける行為なわけで、言わば妥協の産物なのである。
夢だけでは食っていけない。創作はどこかで折り合いをつけなければ完成しない。そんな苦々しい現実を本作は観る側に突きつけている。
映画を無事に完成させて喜びを吐露するジーンの最後のセリフは、劇中の一般客からすればユーモアにしか聞こえないだろう。しかし、ここまでの苦労を見て知っている我々観客にはきっと”皮肉”に聞こえるはずだ。
総体的な鑑賞感は爽やかなものだが、このモヤモヤとした感情が最後に引っかかり、結果として作品としての印象は忘れがたいものとなった。