「パリよ、永遠に」(2014仏独)
ジャンル戦争・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 1944年8月25日、ナチス占領下のパリ。連合軍の進軍が迫る中、パリ防衛司令官コルティッツ将軍を中心にある作戦会議が開かれていた。それは、ヒトラーが命じた“パリ壊滅作戦”だった。やがて会議を終え、一人部屋に残ったコルティッツの元に中立国スウェーデンの総領事ノルドリンクがやってくる。彼はパリを守るために説得を始めるのだが…。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 第二次世界大戦末期のパリ攻防戦をスリリングな会話劇で描いた戦争映画。
以前観た映画
「パリは燃えているか」(1966仏米)という作品があった。そこで描かれていたパリ焦土戦線が、今回の物語の背景となっている。連合軍の進行によりドイツ軍は降伏寸前まで追い込まれている状態にある。「パリは燃えているか」ではコルティッツは悪役という扱いであったが、今回は物語は主役の一人である。戦場を別の視点から見れるという意味では面白く観ることができた。
本作は、基本的にホテルの1室でのみ繰り広げられる会話劇になっている。後から知ったが、本作には元となった戯曲があるらしく、それを知るとなるほどと思った。
決して派手な戦闘が描かれるわけでなく地味な作りの映画だが、コルティッツとノルドリンクの会話が非常にスリリングに描かれており最後まで手に汗握る展開の連続で目が離せなかった。
すでに敗色濃厚な中、ヒトラーの命令に背けないコルティッツの葛藤。パリに特別な愛着を持つノルドリンクの作戦撤回を求めるネゴシエーションの妙技。二人の掛け合いがギリギリの瀬戸際で展開される。
監督、脚本は「ブリキの太鼓」(1979西独仏)で知られるフィルジャー・シュレンドルフ。
大変緻密で無駄のない作りが徹底されており、このあたりにはシュレンドルフの手腕が感じられる。途中でドイツ軍の作戦実行部隊の様子がカットバックされ、更に緊張感を盛り上げられているのも上手い演出だった。
尚、本作には原作者も脚本に参加しているので、そこも上手く功を奏しているように思う。スリリングな展開がストイックに徹底されており、上映時間も80分強とコンパクトにまとめられている。
それにしても、パリ奪還の裏側でこうした交渉が行われていたという事はまったく知らなかった。現在のパリがあるのは、ひょっとしたらノルドリンクのおかげかもしれない。歴史の教科書には載らない、知られざる舞台裏を垣間見た思いである。