「なぜ君は総理大臣になれないのか」(2020日)
ジャンルドキュメンタリー・ジャンル社会派
(あらすじ) 衆議院議員・小川淳也の17年に渡る政治活動を追いかけたドキュメンタリー。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 自分は小川淳也氏のことを全く知らずに観た。しかし、一政治家の苦悩を赤裸々に描いたという点において、本作を興味深く観ることができた。
面白いのは、この監督は17年前に小川氏を撮影したのは単なる偶然に過ぎなかったという点である。本編にも出てくるが、監督は小川氏の縁故者であり、当時は新人候補のドキュメンタリーを撮るという軽い気持ちで始まっている。それがまさか17年も取材することになろうとは、おそらく監督本人も、そして小川氏も予想していなかったことだろう。その証拠に映画の企画のタイトルも途中から変更されている。この「なぜ君は総理大臣になれないのか」というタイトルはとてもインパクトがあって良いと思う。
それにしても、本人や家族、監督自身も吐露しているように、小川氏が政治家に向いていないということは映画を観ているとよく分かる。政治家は時にウソをつき、時に他人を蹴落とすほどの権力欲がなければ大成しない職業だと思う。残念ながら、5回も当選しているにも関わらず小川氏は、17年前の新人議員の頃から余り成長していないように見えた。また、選挙直前になって所属する党を変えるのも自信のなさの表れ以外の何物でもないだろう。
映画は後半から、離党する際の彼の苦しい胸の内をフィーチャーしていく。選挙に勝ちたいという思いと、投票者や関係者を裏切りたくないという思い。その板挟みにあう小川氏の葛藤は興味深く観れた。
選挙戦の舞台裏を描いたドキュメンタリーとしては想田和弘監督の
「選挙」(2006日)という作品が先にあるが、候補者と周囲の支える人たちの苦労は「選挙」同様、本作からもよく伝わってきた。
印象的だったのは小川氏の二人の娘の言葉である。「政治家の妻にだけは絶対になりたくない」と吐露している。政治家とは何とも因果な商売である。