「れいわ一揆」(2019日)
ジャンルドキュメンタリー・ジャンル社会派
(あらすじ) 山本太郎が2019年に立ち上げた政党れいわ新選組から出馬した東大教授・安富歩の選挙活動を追ったドキュメンタリー。
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(レビュー) 安富歩のことは本作の監督である原一男のyoutubeチャンネルに出演していたのを見ていたので知っていた。その時の安富氏は女性装をしており、原監督の質問に飄々と受け答えをしていた。いかにも原監督が好きそうな、物怖じしないアクの強い人物…という印象を持った。
彼はその時に確かに国政選挙に出馬するかもしれないと語っていた。自分はその場限りの単なる笑い話に過ぎないと思っていた。ところがである。それが現実のものになり、そして本当にこうして映画になった。正にひょうたんから駒である。
原監督はユーモアとペーソスを散りばめながら、ドキュメンタリーというジャンルにエンタテインメントを多分に持ち込むようなところがあり、自分はそこが毎回面白く観ている部分である。しかして、今回もその作家性は存分に発揮されていると思った。
主となる撮影対象は安富氏だが、彼以外にれいわ新選組の代表山本太郎氏や他の候補者たちも要所でフィーチャーされている。自分はれいわ新選組や山本太郎氏のことは知っていたが、安富氏以外の候補者については全く知らなかったので興味深く観ることができた。安富氏に負けず劣らず、みな個性的な人物たちである。
ただし、今回も前作
「ニッポン国VS泉南石綿村」(2017日)に続き、4時間を超える大作となっている。
残念ながら、今回はこれが非常に長く感じられた。まず、出てくる映像は基本的に街頭演説であり、絵面的に退屈してしまう。この構成であれば2時間程度が限界ではないだろうか。コンパクトにまとめても作品のテーマ自体は十分に伝わってくると思う。どういうわけか最近の原監督は大作志向に寄っている。
確かに安富氏の選挙活動は大変ユニークであることは間違いない。彼は馬が好きで、どこにでも馬を引き連れて演説をする。当然人々の注目を集めるので映像的には面白いものが出来上がるのだが、逆に言うとコレしかないのである。ホコ天での街頭演説はマイケル・ジャクソンの「スリラー」のダンスを用いて少し趣向を凝らしていたが、その他はほとんど同じ主張、同じ絵面の繰り返しである。やはりこれだけでは4時間という長時間を持たせるは難しい。
小規模態勢で撮影する原監督の作品である。撮影期間の短さやスタッフ不足。そのあたりの事情が祟っているのではないだろうか。
映画序盤で原監督は他の候補者も含めて群像劇風に撮りたかったと語っていたが、それが成功しているかどうかは甚だ疑問である。