「i-新聞記者ドキュメント-」(2019日)
ジャンルドキュメンタリー・ジャンル社会派
(あらすじ) 東京新聞社会部記者・望月衣塑子の活動を追ったドキュメンタリー。
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(レビュー) 同年に公開された「新聞記者」(2019日)のモデルとなった東京新聞社会部記者・望月衣塑子の取材活動を追いかけたドキュメンタリー。
監督は
「FAKE」(2016日)の森達也。前作「FAKE」と比べるといささか地味な印象はぬぐえないが、極めて問題意識の高い硬派な社会派作品となっている。
映画は全編に渡って望月氏の目を通して安倍政権に対する厳しい追及が描かれる。森友・加計問題や沖縄軍基地の赤土問題等、当時の政治面を賑わせた様々な問題が取り上げられているので興味深く観ることができた。
ただ、このドキュメンタリーの本質は『政治記者側の問題点』を明示したという点にあると思う。
ご存じの方もいるかもしれないが、大手メディアで構成される現在の記者クラブは政権にベッタリな組織になり果てている。記者会見では決まった質問をして決まった答えを引き出す。今回の望月氏のように、政権に批判的な質問をする記者なほとんどいない。この制度の閉塞性は今に始まったことではなく、連綿と続いているのだ。
映画は望月氏の取材活動の限界を通して、この記者クラブ制度の実態を赤裸々に描いて見せている。国民の知る権利はどこへ行ったのか?マスコミは政治を監視する役割を持たされているのではないか?改めて色々と考えさせる作品になっている。
ただ、個人的にはそれだけでは物足りなさを覚えるのも事実だった。政権とマスコミの蜜月はここで描かれるまでもなく、昔から映画の中では描かれてきたことであるし、そのこと自体に何の驚きも発見もない。
更に突っ込んで新聞社の内情にまでメスを入れないと、このテーマを語るには不十分という気がした。
むしろ、森監督自身がいかにして官房長官の記者会見に潜り込んでいくか?その悪戦苦闘をセルフレポートした方が、意欲的な作品になったのではないだろうか。本編の中で少しだけ描かれていたが、個人的にはそちらのほうに関心を持ってしまった。
尚、終盤にドキュメンタリーらしからぬ”ある映像演出”が登場してきて面食らった。言いたいことは分かるし、面白い趣向だとは思うが、本作の全体のトーンからすると若干違和感を覚えた。