「抵抗」(1956仏)
ジャンル戦争・ジャンルサスペンス
(あらすじ) ドイツ占領下のリヨン。フランス人将校のフォンテーヌ中尉はモントリュック監獄の独房に収容された。中庭では毎日のように銃殺刑が行われる中、身の危険を感じた彼は早々に脱獄を計画するのだが…。
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(レビュー) ドイツの捕虜収容所から脱獄するフランス人将校たちの姿をスリリングに描いたサスペンス作品。
食事用のスプーンで穴を掘ったり、小包で届いた衣類とベッドの針金を使って脱出用のロープを作ったり等々。フォンティーヌは静かに、そして淡々と確実に脱出計画を実行していく。ドキュメンタリータッチで捉えたスタイルがヒリヒリとした緊張感を生み出し最後まで面白く観ることができた。
尚、本作を観てC・イーストウッド主演の「アルカトラズからの脱出」(1979米)を思い出した。あれもひたすら脱出計画を淡々と綴った作品だった。派手なシーンはないが、ラストの爽快感も含め実にスリリングな脱獄映画になっていて大好きな作品である。この「抵抗」も地味ながら中々の力作に仕上がっている。
監督、脚本はロベール・ブレッソン。プロの俳優を起用しないことで有名なブレッソンだが、ここでもそのスタイルは踏襲されている。能面のように表情を崩さないキャストたちの演技は、看守に脱獄計画を感付かれてはいけないという彼らの思いも相まってとてもリアルに感じられた。ポーカーフェイスを決め込んで淡々と実行していく演出はひたすらストイックである。いかにもブレッソンらしい。
映画は最初から最後までフォンティーヌのナレーションで進行し、脱獄計画をドキュメンタリックに展開させている。彼の心の内面も丁寧に語られるので、観ているこちらもそれに自然に感情移入することができる。
ブレッソンの作品の中では割と娯楽要素が高めな映画ではないだろうか。
それにしてもこの緊張感はただ事ではない。
例えば、周りのドイツ兵の顔は一切写さず、首から下だけしか見えない。そして、銃殺刑も機関銃の音だけで表現し、完全にフォンティーヌの”主観”を徹底的に追及されている。普通の監督ではここまで禁欲的な演出はできないであろう。
ラストはいい意味で期待を裏切ってくれた。案外ストレートな幕引きで終幕する。胸がすくようなラストは、これまた従来のブレッソン映画にはない娯楽色だろう。