「ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結」(2021米)
ジャンルアクション・ジャンルコメディ
(あらすじ) 南米のとある国家でクーデターが起こる。新たに誕生した軍事政権はアメリカに反旗を翻し恐るべきスターフィッシュ計画を発動した。この情報をキャッチしたアメリカ政府は、ジョーカーの元恋人ハーレイ・クインやスーパーマンを半殺しにした最強スナイパーのブラッドスポートはじめ、いずれ劣らぬ極悪囚人たちを集め、10年の減刑と引き換えに極秘ミッションを課す。
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(レビュー) DCコミックのヴィランを総結集させた極悪集団”スーサイド・スクワッド”の活躍を描いたアクション大作。
2016年に「スーサイド・スクワッド」(2016米)というタイトルで一度映画化されたが、興行的には成功したものの批評的には賛否あり結局シリーズ化されることなくたった1本で終わってしまった。今回はその仕切り直しという事で、ディズニー・マーベルスタジオを解雇されたばかりのジェームズ・ガン監督を招いて製作されたリブート版である。
ジェームズ・ガンと言えば
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014米)と
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」(2017米)で一躍ハリウッドのヒットメーカーとなった気鋭の作家である。残念ながら過去の発言によりディズニー・マーベルスタジオとの契約を解除され、一時は映画を撮れなかった。そこを救ったのがライバルであるDCである。結果、こうして新作を撮れたことは非常に嬉しく思っている。
尚、彼は本作の後に古巣マーベルに戻り「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(以下「GOTG」)の第3弾を撮影する予定となっている。
さて、前回の「スーサイド・スクワッド」(以下「スースク」)は一応観たことはあるのだが、残念ながら個人的には今一つだった。キャラクターは揃っているのだが、ハーレイ・クインを除く他のメンバーが余り印象に残らなかった。
監督のD・エアーは
「エンド・オブ・ウォッチ」(2012米)という傑作を輩出した才能ある映画監督だと思う。しかし、「スースク」のような群像劇を描くのは、どうやら余り得意ではないようである。
今回の仕切り直しスーサイド・スクワッド(以下「新スースク」)は、そのあたりの欠点が見事に補修されている。何せ「GOTG」で魅力的な荒くれ者たちの群像劇を見事に創り上げた経験を持っている。やはりガン監督は複数人がチームを組んで何かを成し遂げる、という作劇を得意としているのだろう。
本作では全部で14人の超人が登場してくる。一見すると多すぎると思うが、ご心配なく。冒頭の戦闘シーンで大半が死んでしまう。この人を食った幕開けからして、いかにもガン監督らしいユーモアだと思ったが、以後は少数精鋭のメンバーを軸にしたドラマに落ち着いていく。
特に、夫々のバックストーリーを軽快且つユーモラスに紹介して見せたあたりは中々に上手い。物語を停滞させることなく自然な流れの中で消化している。ここが前「スースク」と決定的に違う所である。
物語自体はいたってシンプルな言わば”砦攻略物”となっている。2時間強の長さをかけて内容はコレだけと言うのはやや寂しい印象も受けるが、そこはそれ。アクションに重点を置いた作りは娯楽映画としての潔さを感じる。
「特攻大作戦」(1967米)や
「ナバロンの要塞」(1961米)といった戦争映画との共通性も感じられた。
様々な個性的なキャラが登場してくるが、個人的に一番気に入ったのはネズミ使いの”ラットキャッチャー2”だった。彼女は父と別れた悲しい過去を持っているが、これがクライマックスで感動的にインサートされている。これには思わず胸が熱くなってしまった。ちなみに、彼女とブラッドスポートのバックストーリーを絶妙にリンクさせたあたりも実に上手い。こうした浪花節的な作劇は「GOTG」でも見られたが、正にJ・ガン監督の面目躍如といったところだろう。
アクションシーンで最も印象に残ったのは、ハーレイ・クインの脱走シーンである。ユーモラスでブラックでガーリーな映像演出に監督のセンスを感じる。
ただ、全体的にバイオレンスシーンは過激で、中には幾分ゴア描写も入ってるので観る人によって好き嫌いが分かれるかもしれない。本作はR15指定作品である。
尚、エンド・クレジットの後にオマケがついているので最後まで席を立たずに見届けよう。