fc2ブログ










最後の脱出

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

新品北米版DVD!【最後の脱出】 No Blade of Grass!
価格:4206円(税込、送料別) (2021/9/8時点)



「最後の脱出」(1970英)星3
ジャンルサスペンス・ジャンルSF
(あらすじ)
 環境汚染による自然破壊が極度に進み食料危機や疫病が蔓延した世界。建築家のジョンと妻アン、娘のメアリーは、非常事態が宣言されたロンドンから郊外の弟の牧場へ避難する計画を案じる。しかし、彼らの行く手には強奪や暴力の世界が待ち受けていて…。

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 滅亡の危機に瀕した世界で繰り広げられるサバイバル・ロード・ムービー。

 製作された年代を考えると、公害、食糧危機、エネルギー不足といった問題が俄かに取り沙汰されていた時代なのかもしれない。来るべき未来に対する警鐘が時代の先見を呈していることはSF作品ではよくあることだ。昨今の疫病の蔓延などを見てもそのことは痛感される。

 本作には「草の死」という原作がある。1957年に刊行されている(未読)が、その頃からこうした終末物が書かれていたということは驚きである。いつの時代も”世紀末”というのは物語のファクターとして存在していたという事である。

 さて、映画の出来はというと、正直微妙である。演出にムラがあり全体のバランスがうまく取れていない。また、低予算なせいで世界観に余り広がりが感じられないのも残念だった。全世界がパニックに陥っているという状況に余り現実味が感じられなかった。

 基本的にはジョンたち一家のサバイバル劇をドキュメンタリータッチで描く作りなのだが、途中で意味不明に暴力やレイプのシーンがカットインされており、これも余り成功しているとは言い難い。おそらくメリハリをつける意味でこうした演出をとっているのだろうが、案の定そのシーンは後になって登場してくるし、前もって見せられているのでショック度が半減してしまっている。

 こうした奇妙な演出のせいで珍品的な作品になっているのだが、ただ後の作品に影響を及ぼしているのではないかと思われる節もあり、観ようによっては興味深い部分もある。

 例えば、後半でジョンたちはバイカー集団の襲撃にあうのだが、後の「ゾンビ」(1978米伊)や「マッドマックス」(1979豪)を彷彿とさせたりもする。
 また、ジョンはアイパッチをしているのだが、これも「ゾンビ」の冒頭に出てきたテレビコメンテーターに重なって見えた。
 あるいは、殺伐としたロードムービーということで言えば「28日後…」(2002英)との共通性も感じられた。途中でジョンたちは、あるカップルと合流して行動を共にするのだが、彼らとの緊迫した関係は面白く観ることができた。

 後に終末物はどんどん作られていくが、それらに先んじた設定、描写を見出すことができる。そういう意味では本作はある意味で画期的な作品だったのかもしれない。

 もう一つ、力こそ正義という弱肉強食主義を物語の中で徹頭徹尾、貫き通した点は野心的だと思う。何せ主人公のジョンでさえ生き残るためには平気で人を殺し、食料を奪うのだから、まったくもって容赦がない。

 製作、監督はコーネル・ワイルド。元々は俳優だが、後年は監督業にも進出し、本作のようなハリウッドとは一線を画した映画作りを行っていた才人である。その映画作りの姿勢はここでも一貫している。娯楽性を排した冷徹なエンディングと過剰なバイオレンス描写は、明らかに既存のハリウッド映画とは相対するものであり、そこに彼の作家性が認められる。
[ 2021/09/25 00:35 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/1995-ad07c8da