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ザ・バニシング -消失-

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「ザ・バニシング -消失-」(1988オランダ仏)star4.gif
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 レックスは恋人サスキアとドライブをしていた。楽しいひと時を過ごすが、ドライブインで突然サスキアが姿を消してしまう。それから3年後。レックスはいまだにサスキアを忘れられず独自に捜索を続けていた。そんな彼の前に自分が犯人だと名乗る男が現れ…。


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(レビュー)
 普通であれば失踪した恋人が見つかってハッピーエンドとなるだろうが、本作はどこまで行っても非情な現実を突きつけてくる。

 映画を観ていれば、おそらくサスキアはもうこの世にいないという事は何となく予想がつくだろう。それでも作中のレックスは彼女を捜し続ける。その姿はひたすら悲痛であるが、同時にその思いを察すると同情せずにいられない。したがって、観ているこちらは当然彼に共感しながら物語を追いかけて行くこととなる。

 そして、この映画が特異な所は、そんなレックスの描写と”対”を成すような形で犯人サイドの物語も紡いでいく点である。

 犯人は学校教師をしながら優しい妻と二人の娘と幸せな家庭を築いているごく普通の中年男である。表向きはとても犯罪を犯しそうにないのだが、そのギャップが実に恐ろしい。しかも、非常に冷静で用心深い。

 物語後半はレックスとこの犯人が相まみえるという展開に入っていくのだが、ここから一気に物語が読めなくなる。犯人の目論見は何なのか?レックスの復讐はどうなるのか?最後の最後まで分からず面白く観ることができた。

 しかして、何とも言えない不気味な形で映画は終わる。余りにも異様な形で終わるので、観終わってからも暫く脳裏から離れなかった。そして、この映画は一体何について描いた映画だったのだろう?と考えてしまった。
本作で最も印象の残ったのはこのラストである。

 もう一つ印象的だったのは、犯人が幼少時代の思い出を振り返るーンだった。幼かった彼は2階の窓から飛び降りて腕を骨折したと回想する。飛び降りたら怪我をするかもしれないがその想像を反証するためには飛び降りるしかなかった…と当時の心理を振り返っている。恐ろしい思考だが、何となくその思考は分からないでもない。

 人間は誰でもやってはいけない事をやってみたくなるという心理を持っているものである。例えば、物を盗みたい、誰かを殺したい、殴りたい等々。ただ、普通であれば想像だけに留めるのだが、この犯人はそれを実行に移してしまう所が常人と違う。だから、この犯人には理解しがたい恐怖を感じてしまうのだろう。本作は、とにかくこの犯人像が強烈である。

 尚、クライマックスシーンを観てD・フィンチャー監督作「セブン」(1995米)を連想した。ブラッド・ピット演じる主人公が犯人が用意した小箱を開けるシーンは息を呑んで観たものだが、今回のクライマックスにも同様のドキドキ感があった。果たして自分だったらどういう選択をするだろう?と考えてしまった。

 監督、脚本はジョルジュ・シュルイツァー。本作が評判を呼び、後にハリウッドに招かれで同作のリメイクの監督を自ら務めることになった。そちらは未見であるが、いずれ機会があれば観てみたいものである。
[ 2021/10/16 00:59 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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