「マンディ 地獄のロード・ウォリアー」(2017ベルギー)
ジャンルホラー・ジャンルアクション
(あらすじ) 人里離れた静かな土地で愛する女性マンディと穏やかな日々を送っていたレッド。ある日、謎のカルト集団に襲われ、マンディはレッドの目の前で惨殺されてしまう。怒り狂ったレッドは壮絶な復讐を開始する。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 愛する恋人を殺された男の壮絶な復讐劇を過激なバイオレンスシーンて綴ったアクション作品。
121分という尺のわりにドラマが存外シンプルで食い足りないが、全体を貫く異様な雰囲気に惹きつけられた。
監督・原案・共同脚本は、映画監督ジョルジ・P・コスマトスを父に持つパノス・コスマトス。父はS・スタローン主演の「コブラ」(1986米)や「ランボー/怒りの脱出」(1985米)といった作品を手掛けたことでも知らる職人監督である。一時はハリウッドのヒットメイカーに登り詰めた実績を持つ監督だけに、その息子はどんな作品を撮るのだろう?と興味深く観たが、蓋を開けてみればビックリ。父親を超えるようなハードコアでマッチョなアクション映画になっている。
映画前半は割とゆったりとしたトーンが続き、ドラマも沈殿気味で余り動きがない。正直、観てる最中ずっと手持無沙汰で退屈してしまった。もう少し脚本を吟味してほしい。
ドラマが本格的に動き出すのは中盤からである。愛するマンディを殺されたレッドが復讐のために立ち上がり、ここから一気にクライマックスまで突っ走っていく。
アクションシーンの連続で畳みかける展開はすこぶる痛快で、レッド役のニコラス・ケイジもエンジン全開でノリノリで演じているのが観てて気持ちがいい。チェーンソーを使った1対1のタイマン勝負には興奮させられたし、謎のバイク集団の登場も「マッドマックス」のようでワクワクさせられた。
本作は低予算のB級映画然とした作りで、そのあたりもマニア心をくすぐる。ある種中二病的といってもいいのだが、このチープさは嫌いではない。
ただ、ラストは今一つ中途半端で締まりが悪い。どうせ中二病全開で行くのであればとことんスカッとする結末で終わらせても良かったのではないだろうか?
もう一つ本作で特筆すべきは映像作りである。独特の照明効果と毒々しい色彩感覚が画面を染め上げ、後半にいたっては、ほとんど悪夢を見ているかのようなトリップ感に襲われた。例えるなら、D・リンチ的悪夢的世界観と言えばいいだろうか。地獄の底なし沼に引きずられて抜け出せなくなったような恐怖が味わえた。画面作りに対するこだわりは相当なものである。
尚、最も印象に残ったのは、レッドが復讐を決意するトイレのシーンである。ニコラス・ケイジがブリーフ姿で延々と怒り狂うのだが、余りにもテンションが高くて途中で笑ってしまうほどだった。また、ラストで見せた笑顔もインパクト大で忘れがたい。