「ブルー・リベンジ」(2013米仏)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) ドワイトは古ぼけた青いセダンで寝起きするホームレスである。ある日、警察に呼び出されて、両親を殺した犯人が司法取引により釈放されたと告げられる。彼は復讐を果たすために出所した犯人の元へ向かうのだが…。
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(レビュー) 両親を殺された男が復讐を果たそうとしながら非情な運命に陥っていくサスペンス・ドラマ。
いわゆるアクション主体のリベンジ物ではなく、陰鬱としたハードでダークなドラマである。観終わった後には復讐の虚しさがズシリと響いてくるような作品だ。
本作は復讐そのものがメインテーマではないことは明らかで、その証拠にドワイトの復讐は案外、簡単に終わってしまう。しかし、物語はここからが本題で、復讐を果たしたドワイトに迫る危機、苦悩がじっくりと語られていくようになる。
単純に復讐して終わりとなっていない所に歯ごたえを感じた。いわゆる復讐の連鎖、虚しさといったテーマが語られることになるのだが、目を離せないリアリティが感じられた。
両親が殺害された過去には裏話があり、これもミステリとして上手く物語の後半を盛り上げていた。
途中で登場するドワイトの旧友が彼の復讐劇を手助けするのだが、こうしたサブキャラの使い方もドラマを展開させる上では中々効果的だった。
全体的に脚本は中々良く出来ており、テーマも真摯に受け止めることができた。
本作で唯一残念だったのはドワイトの姉の扱いである。前半こそキーマンとして良い存在感を示していたが、中盤以降は完全にカヤの外に置かれてしまったという印象である。物語をドラマチックにする上では欠かせぬキャラクターだと思っていたので、その存在意義が薄まってしまったのが実に勿体なく感じられた。
監督、脚本は本作が長編2作目のジェレミー・ソルニエ。
セリフを極力削ぎ落し映像で見せるタイプの作家のように思った。静と動のバランス感覚も中々手練れていて、それによって映画全体に上手く緩急が付けられている。全体的にはコーエン兄弟的なスタイルを想起させた。特に、本作は彼らの
「ノーカントリ」(2007米)に少し雰囲気が似ているような気がする。
一方で、ユーモア感覚も抜群で、例えばドワイトが乗るボロボロの青いセダンを巡る一連のやり取りにはクスリとさせられた。
ドワイトはこの青いセダンに寝泊まりしているのだが、復讐を果たした後にそれを一度手放す。しかし、逆に復讐された相手の家族の報復にあい、ドワイトは再びそのセダンと運命の再会を果たしそれに乗って更なる復讐の旅へと出るのだ。そして、ラストでこの青いセダンは意外な人物に引き渡されて映画は終幕する。
こうした一連の思慮に富んだユーモアを、この監督は明らかに計算して行っている。そこにこの監督のセンスの良さを感じた。
尚、映画の原題は「Blue Ruin」。直訳すると「青い廃墟」ということになる。