「非情の罠」(1955米)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) ボクサーのデイヴィーは、向かいのアパートに住むダンサーのグロリアに好意を寄せる。しかし、彼女は大物ギャングのラパロの情婦だった。デイヴィーは彼からグロリアを救い出そうとするのだが…。
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(レビュー) 巨匠S・キュ-ブリックの商業映画デビュー作。監督、脚本、撮影、編集、録音とほとんど一人でこなしている。
話自体はとりとめのないボクサーとダンサーの恋の逃避行なのだが、映像演出は各所で氏の才能の萌芽が見て取れる。
例えば、デイヴィーとグロリアのアパートは向かいあっており、窓越しにお互いの部屋が見えるようになっている。デイヴィーから捉えたグロリアの美しい姿は芸術的で、画面設計に対する凝り具合がいかにもキューブリックらしい。
他にも、ラパロの事務所に続く階段を捉えたシンメトリックな構図などもキューブリックが好みそうなショットである。
ボクシングシーンにおけるPOV撮影は非常にラディカルで、当時としては中々斬新だったのではないだろうか。パンチを撃ち合う所をローアングルで捉えたショットも大胆で迫力が感じられる。
バレエの回想シーンも幻想的な美しさで目を見張るものがあった。
このように映像に関しては色々と見ごたえのある作品である。
尚、クライマックスはマネキン倉庫での格闘シーンとなる。ここは少しシュールで、他ではちょっと味わえない奇妙な面白さが感じられた。