「お嬢さん」(2016韓国)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 1939年の朝鮮半島。貧民街で泥棒一家に拾われ、スリの腕を磨いて育った孤児の少女スッキ。ある日、“伯爵”と呼ばれる詐欺師にスカウトされ、彼の計画を手伝うことになる。ターゲットは日本の華族の令嬢・秀子。伯爵は秀子を誘惑して結婚し、財産をまるまる奪い取ってしまおうとしていた。スッキはメイドとして屋敷に入り込み、秀子を巧みに操りながら結婚へと誘導していくのだが…。
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(レビュー) サラ・ウォーターズの傑作ミステリー「荊の城」(未読)を
「JSA」(2000韓国)、「オールド・ボーイ」(2003韓国)、
「渇き」(2009韓国)の鬼才パク・チチャヌクが映像化した作品。
詐欺を働くために豪邸にメイドとして忍び込んだ女性が数奇な運命に飲み込まれていく様を官能的な描写を交えて描いたサスペンス作品。舞台を日本統治下の朝鮮半島に変えているのが物語のスパイスとなっている。
物語は3部構成になっている。
それぞれスッキ、秀子、伯爵と視点を切り替えて展開される。基本的には同じシーンの反復で、それを3者の視点で描くという構成になっているのだが、伏線の張り方と回収に見応えを感じた。あのシーンの裏ではこうだったのか。あの時の心情はこうだったのか。そうした発見があるので、同じシチュエーションが繰り返されても飽きなく観れる。
だた、最も面白く観れたのはやはり第1部で、それ以降は繰り返しの展開になってしまうのでどうしても興味が薄れてしまう。色々と変化を加えて工夫は凝らされていると思うが、こればかりは如何ともしがたい。
演出は、とにかく大仰でコメディチック見えてしまう個所もあるのだが、おそらくそれは敢えてやっているのだろう。CGのはめ込み映像にしてもそうだが、どこか寓話性を演出しようという狙いが感じられた。
映像についてはさすがの完成度を見せつけている。とにかく画面の隅々まで情報量が詰まっており見ごたえが感じられた。ただ序盤は大林宣彦作品よろしく怒涛の激しいカッティングで責めてこられるので若干ついて行けない部分があった。
また、本作はプロダクション・デザインも画面のクオリティを格段に上げている。特に、朗読会の舞台装置のシュールさと絢爛さは特筆ものである。
そして、やはり最もインパクトが大きいのはスッキと秀子のラブシーンの数々だった。ベッドシーンも官能的でいいのだが、個人的には入浴時における歯磨きのシーンに隠微さを感じた。スッキがやすりで秀子の奥歯を磨くのだが、これでもかというくらい執拗に撮られており、肌が露出しているわけでもないのに妙に艶めかしかった。
キャストについては、日本語のセリフを話さなければならない関係で、いささか不自然に思う俳優がいたのが残念である。主役のスッキは自然なセリフ回しで良い。問題は秀子と伯爵で、こちらはどうしても片言な日本語に聞こえてしまう。特に、秀子は日本人という設定なので尚更違和感を持ってしまった。