「悪女/AKUJO」(2017韓国)
ジャンルアクション
(あらすじ) 幼い頃に父を殺されたスクヒはマフィアの男ジュンサンに引き取られ、殺し屋として育てられる。やがてジュンサンと恋に落ち結婚するが、その直後、ジュンサンは敵対する組織に殺されてしまう。激しい怒りを胸に敵を殲滅したスクヒだったが…。
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(レビュー) 殺し屋として育てられた女性の壮絶な運命をスタイリッシュな映像をで描いたアクション作品。
冒頭のFPS仕様なアクションシーンからして度肝を抜かされたが、本作の売りは何と言ってもこのアクションシーンである。
中盤のバイクチェイス、クライマックスの格闘アクションシーンも凄まじく、一体どうやって撮ったのか分からないような映像が次々と出てくる。おそらくCGを駆使している部分もあろうが、それを意識させないほどのリアリティと、スピードとパワーが感じられた。
以前観た作品でPOV形式のアクション映画
「ハードコア」(2016ロシア米)という作品があったが、あれを連想した。「ハードコア」もかなり革新的な映像作品で驚かされたものである。
一方、物語もシンプルながら中々良く出来ていると思った。
スクヒが無敵の殺し屋になるまでの過程がやや安易に映るが、そこはそれ。バックストーリーを全て回想形式で表現することで、ドラマの停滞感を取り除いている。この構成は観る側にとってはストレスフリーになるので上手いやり方だった。
だからと言って、スクヒのドラマが空疎になっているわけでもなく、そこは現在の彼女の殺し屋として、母親として、そして恋する女としての葛藤が深く掘り下げられているので十分の見応えを感じる。
特に、一般社会に溶け込もうとする彼女の人知れぬ苦悩は抒情性も感じられて面白く観れた。同じアパートの隣人に対する複雑な感情が一定の味わいをもたらしている。
強いて不満を挙げるなら、スクヒが参入される暗殺組織がかなり突拍子もないアイディアである点である。国家の秘密組織という設定なのだが、実際にそうした組織があるのかどうか分からないが、リアリティという点で疑問を持ってしまう。全編リアリティが薄みな物語ではあるのだが、最低限このあたりの設定くらいはもう少し詳細な解説が欲しかった。
また、スクヒが暗殺を実行するシーンが、もろにL・ベッソン監督&A・パリロー主演の「ニキータ」(1999仏)の物真似になってしまっているのもクリエイティビティ―という点からすると、どうかと思う。先述したように他のアクション・シーンがいずれも新鮮だったので残念である。
スクヒを演じるのは
「渇き」(2009韓国)のキム・オクビン。「渇き」でも様々な表情を見せることでキャラクターに厚みを持たせることに成功した彼女が、ここでは大胆なアクションを披露しており、今後の飛躍が一層期待できそうである。