「サマー・フィルムにのって」(2020日)
ジャンル青春ドラマ・ジャンルSF・ジャンルロマンス・ジャンルコメディ
(あらすじ) 時代劇オタクの女子高生ハダシは映画部に所属している。自分の時代劇の企画が没になり、文化祭はキラキラ恋愛映画を撮ることになった。失望した彼女は、ある日凛太郎という青年に出会う。自分の作品の主役にピッタリの彼を見て、一度は諦めかけた自分の映画を撮ろうとするのだが…。
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(レビュー) 理想の主役、凛太郎に出会い俄然映画を撮る気になったハダシの悲喜こもごもを賑々しく描いている。
凛太郎には”ある秘密”があり、これがこの物語を面白くしている。SF映画の要素を持ち込んでいているのだ。劇中には「時をかける少女」やSF作家ハインラインといったフレーズが登場し、それとなく伏線を張っているのがうまい。また、コメディ色が強いので、突飛もないSF設定もどこか自然に受け止められる。
終盤に行くにつれて、ハダシと凛太郎の間にほのかな恋愛めいた感情が芽生えて行くが、そこを甘ったるくしなかったのも気が利いていた。何せハダシはキラキラ恋愛映画大嫌いな時代劇オタクである。彼女なりの恋愛を真摯に描いていて好感が持てた。観ようによっては余りにも大仰で舞台劇的で、リアリティは皆無である。しかし、ここまで突っ切ってしまうと逆に痛快である。自分は「蒲田行進曲」(1982日)の泥臭さを連想した。
個性的なサブキャラも魅力的だった。ハダシの親友、ビート版とブルーハワイが良い味を出している。夫々にドラマも用意されており、メインのドラマに上手く相関されていた。この辺りには脚本の巧みさを感じる。
ただ、後半にブルーハワイのドラマが一気呵成に盛り上げらるが、果たしてこれはどこまで必要だったかは疑問である。90分強というコンパクトな中に夫々のドラマがうまく完結されていると思うが、ある程度の取捨選択はあっても良かったような気がした。
これを追加するのであれば、むしろハダシの撮影に協力するその他のスタッフたちをもう少し掘り下げて欲しかった。ダディボーイはかなりピックアップされていた方だと思うが、照明担当のヤンキーは普通であればもっと反抗的でも良かった思う。ハダシたちの輪の中に混ざっているのが少しだけ不自然に見えた。
それにしても凛太郎が住む未来は西暦何年なのだろうか?具体的な描写がないため想像するほかないが、映画という文化が衰退してしまっているということだ。そんな未来人の娯楽は何だろうか?余りにも寂しすぎる未来だ。
本作はある意味でハダシの映画愛に溢れた”映画賛歌”的な作品である。映画を未来に残すために自分は映画を撮る!という決意は余りにも青臭くストレートであるが、同時にとても輝かしいものに映った。自分も映画は貴重な文化的遺産だと思う。
尚、以前観た
「桐島、部活やめるってよ」(2012日)という作品も映画愛に溢れた作品だったが、あれに比べると本作は随分と王道にまとめられている。
まず、最大の違いは本作には悪役と呼べる存在がいないということだ。キラキラ恋愛映画を撮る花鈴は、初めこそハダシの適役であるが、最終的には映画を愛する者同士、友情で結ばれていく。余りにも能天気で楽観的ではないか?と思ったが、爽快感溢れる作りは娯楽然に徹したという事だろう。
個人的には「桐島~」の方が現実を見据えたビターさがあり好みである。