「DUNE/デューン 砂の惑星」(2021米)
ジャンルSF・ジャンルアクション
(あらすじ) 遥か遠い未来。砂の惑星アラキスは宇宙で最も価値がある香料の産地だったが、巨大生物サンドワームに支配された危険な惑星でもあった。アトレイデス家は宇宙帝国皇帝によってアラキスの統治を命じられるが、当主のレト公爵はこの任務に裏があることを感じていた。公爵の息子ポールと母ジェシカと共に一家は壮絶な陰謀に巻き込まれていく。
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(レビュー) 遥か未来の宇宙を舞台にしたSF叙事詩を最新のVFX技術で映像化したアクション巨編。
映像化不可能と言われたフランク・ハーバートの同名SF小説の映像化であるが、これを最初に映画化したのは、今から40年近く前のことである。カルト的な人気を誇っていた映像作家D・リンチによって「デューン/砂の惑星」(1984米)として製作された。原作が大長編ということもあり、映画の出来はダイジェスト風でファンの間では余り評判は良くなかったと記憶している。それでも砂漠に生息する砂虫”サンドワーム”の特撮シーンや、非常な運命に翻弄される主人公ポールを巡るドラマは中々見応えがあり、今となっては根強いファンも多い作品となっている。
今回は原作小説の途中までを映画化したパート1であり、そういう意味ではリンチ版のような表層をなぞるような作りにはなっていない。じっくりと腰を据えた作劇で重厚感のある作品に仕上がっており、リンチ版で落胆したファンの期待には応えてくれているだろう。
まず何と言っても特筆すべきは、こだわりぬかれた映像の数々である。
本作の監督を務めたD・ヴィルヌーヴは長年、本作の映画化の企画を温めていたということで、その熱量は一つ一つの画面から伝わってきた。氏は過去にも
「ブレードランナー2049」(2017米)や
「メッセージ」(2016米)といったSF映画を撮ってきた実績があり、相当SFジャンルに対する造詣が深いと見える。
特に、ポールたちがアラキスに到着するシーンは、空間的な広がりと重厚感溢れる画面作りが徹底されており鳥肌物だった。実際の砂漠で撮影されたというリアリティも画面に荘厳さをもたらしている。
一方、物語そのものは、いよいよこれからという所で終わってしまい、何とも煮え切らない形で終幕する。
ポールの波乱に満ちたドラマはここからが本番であり、彼がいかにして宇宙の支配者である皇帝に戦いを挑んでいくか…というのは今後の展開となる。
そもそも今回はパート1と銘打ってるので、これは致し方がない所だろう。考えようによってはここで終わらせるのは丁度区切りが良いという見方もできる。
ただ、パート2は今のところはまだ白紙の状態ということだ。ここまで引っ張っておいてそれはないだろうと思うのだが、監督のヴィルヌーヴ自身も続編を熱望しているそうなので、そう遠くないうちに何らかの告知が出るのではないかと期待している。
そんなわけで、正に宙ぶらりんの状態で放り出されてしまった感じで、正直、物語自体の歯切れは悪い。重厚感と神秘性に溢れた映像美は一級品であるが、単体のドラマとしてみると何とも微妙である。
キャスト陣はみな素晴らしいと思った。
特にポールを演じたティモシー・シャラメの造形が素晴らしい。洗練された佇まいは王族の末裔としての説得力も十分である。また、自らの運命に翻弄されながら苦悩する姿も丁寧に演じていて好印象である。