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イット・カムズ・アット・ナイト

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「イット・カムズ・アット・ナイト」(2017米)star4.gif
ジャンルホラー・ジャンルSF
(あらすじ)
 人類は未知の感染症によって絶滅の危機に瀕していた。ポールと妻のサラ、息子のトラヴィスは、森の中でひっそり暮らしていた。ある夜、家にウィルと名乗る男が侵入する。彼は家族を守るために食料を求めて彷徨っていたというのだが…。



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(レビュー)
 森の中で決死のサバイバルを繰り広げる家族の恐怖を緊張感あふれるタッチで描いたサスペンス・スリラー。

 必要最低限の設定とドラマで描き切った意欲作で、最後まで緊張の糸が途切れることなく面白く観ることができた。

 テーマは不審と寛容の狭間で苦悩する家族の物語と解釈した。一見すると低予算のジャンル映画であるが、そこに忍ばされたメッセージは中々鋭い。ましてや未知の感染症が蔓延した世界という設定は、新型コロナで苦しんでいる今のご時世を考えると、俄然リアリティも増してくる。

 監督、脚本、編集はトレイ・エドワード・シュルツ。
 初見の監督であるが演出のキレや抑揚は洗練されており、安心して観ていることができた。
 ただ、画面が暗いので少し分かりづらい場面が多かった。今回は映画館ではなくテレビでの鑑賞だったので仕方がないのかもしれない。
 とはいえ、この画面の暗さが本作に異様な禍々しさを与えていることは間違いなく、特に暗闇にぽっかりと浮かぶ赤いドアを捉えた映像などはまさしくホラー映画的な恐ろしさを堪能できた。

 緊密な脚本も見事である。情報量を極力抑えた語り口により、非常にスリリングな物語に仕上がっている。そもそもどうして世界が感染症で終末を迎えようとしているのか?その理由がはっきりと明示されていないあたりは恐ろしい。逆に判明しないことが、この映画をより不気味なものにしている。

 また、トラヴィスが森の中で何かを目撃したというが、その”何か”もはっきりと説明されない。結局、一家は得体の知れない漠然とした恐怖に怯えるしかないのだが、相手が何か分からないことほど恐ろしいものはない。人は不安になると見えないものを見たりする傾向にある。もしかしたら、その”何か”は彼らが作りだした幻影だったのかもしれない。

 更に穿った見方をすれば、これは人間の排他性、所有欲、自己愛を描いた寓話とも取れる。
 いずれにせよ、限られたシチュエーションの中に様々なメッセージを詰め込んだ風刺性の高いシナリオは見事である。

 もう一つ本作で特筆すべきはラストである。ネタバレはしないが、これほど絶望的なバッドエンドも中々お目にかかれないだろう。普通のハリウッド映画であれば決してこういうエンディングにはしない。このあたりにも監督の気骨が伺えた。
[ 2021/11/21 00:21 ] ジャンルホラー | TB(0) | CM(0)

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