「ロスト・バケーション」(2016米)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 医学生のナンシーは、病気の母を亡くし医師になる夢を諦めかけていた。ある日、地元のサーファーしか知らない秘密のビーチでサーフィンに興じるナンシー。すると突然、巨大なサメに襲われて脚を負傷してしまう。慌てて近くの岩場に避難したものの孤立無援の状態を余儀なくされてしまう。
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(レビュー) サメ映画の元祖とも言うべきS・スピルバーグ監督の出世作「ジョーズ」(1975米)は、個性的な3人の男たちとサメの戦いを描いた傑作だった。今作はそのスリリングさを全編に渡って再現したかのような作品だ。
誰もいないビーチでサメに襲われたナンシーは足を負傷し、小さな岩場に避難する。助けも呼べず、満潮になれば岩場が水面に沈みサメの餌食になってしまう。孤立無援の状態で、彼女はサメと対決することになる。
ナンシーを医学生とした設定がうまくドラマに面白みを生んでいる。負傷した足を手持ちのピアスとネックレスで応急処置したり、サメに襲われたカモメを手当てしたり。客観的に考えてそんなに容易に対応できるものだろうか?と突っ込みを入れたくなるが、映画=フィクションだと思えばこれくらいのご都合主義には目を瞑れる。
また、ビーチで知り合った地元のサーファーや海岸で泥酔している中年男、ナンシー救出のキーマンとなる少年等、サブキャラの使い方も中々上手く物語の展開を饒舌にしている。
上手いと言えば、先述したカモメや海中に発生するクラゲなど、他の動物も物語をしたたかに盛り上げていた。前者は孤独なドラマにかすかなユーモアと癒しを与え、後者はクライマックスの危機的状況を一層スリリングにしている。
ただ、ラストのオチは釈然としなかった。ああいう経験をしてまだサーフィンを続けるナンシーの神経が理解しがたい。
また、本作はサメと対決することでナンシーが成長する、言わば通過儀礼のドラマでもある。そのキーとなるのが母との関係だ。しかし、本作はそこを彼女のセリフのみでしか説明していない。これは非常に物足りなかった。彼女がいかに母を愛していたかを、もっと丁寧に描写して欲しかった。
監督は衝撃のカルト作
「エスター」(2009米)が評判を呼んだジャウマ=コレット・セラ。活きの良い演出と無駄のない語り口が今回も冴え渡り、相変わらずの職人ぶりを発揮している。
ナンシーを演じたのはブレイク・ライヴリー。今回は、ほぼ一人芝居ということもあり正に独壇場の活躍を見せている。尚、彼女は
「デッドプール」(2016米)や
「フリー・ガイ」(2021米)の人気俳優ライアン・レイノルズの奥さんもである。旦那同様、彼女も俳優として順調な歩みを見せており、今後の更なる活躍が期待される。