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ゆれる人魚

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「ゆれる人魚」(2015ポーランド)星3
ジャンルファンタジー・ジャンルロマンス
(あらすじ)
 1980年代のポーランド、ワルシャワ。美しい人魚の姉妹シルバーとゴールデンはある日、ビーチに遊びに来ていたバンドマンたちを目撃し、彼らを追って陸に上がる。そしてナイトクラブへとたどり着くと、姉妹はステージで歌や踊りを披露し、たちまち人気者になっていった。そんな中、姉のシルバーはバンドメンバーの青年ミーテクと恋に落ちる。



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(レビュー)
 人魚伝説をモチーフにしたファンタジー・ロマンス。

 姉妹の人魚が人間界にやってきて、夫々の生き方を模索しながら、やがて悲劇的な結末を迎えるという物語である。

 誰もが知ってる有名な人魚伝説だが、そこにタイプの異なる姉妹の愛憎劇を持ち込んだのが新味のように思う。それによって姉妹、夫々が選択する未来。つまり人間になるのか?それとも人魚のままでいるのか?という人魚伝説のクリシェが描かれる。

 ダリル・ハンナ、トム・ハンクス主演の「スプラッシュ」(1984米)などは、人魚伝説を上手く物語のモチーフに組み込んだ好例のように思うが、本作もそれと同様、最後には切ないロマンスで盛り上げられている。ラストの姉シルバーの葛藤には切なくさせられた。
 一方、妹のゴールデンの魔性性は無垢なシルバーとはまた違った魅力で、こちらも良かったと思う。

 本作は、彼女たちの周縁に集う人物も中々魅力的に描けている。
 ナイトクラブの花形シンガー、クリシャは実に頼もしい姉御肌で姉妹の保護者的な役回りを務めている。ナイトクラブの支配人の人間臭さもコメディライクに料理されていて親近感がわいた。シルバーが恋焦がれるミーテクは如何にも女癖の悪いバンドマンという役どころで、悪役としてまずまずの造形となっている。

 そして、忘れてならないのは本作品の最大の特徴、ミュージカルシーンである。実は本作は要所でミュージカル仕立てになる。これが始まると画面いっぱいにポップなテイストが横溢し楽しい雰囲気に切り替わる。姉妹が勤め先がナイトクラブのステージということもあって、このミュージカル演出は実によくハマっていた。

 また、物語の舞台は1980年代のポーランドである。この頃のポーランドは共産主義国で政府は財政難に貧していた。社会全体が陰鬱としたトーンに覆われ、その重苦しい空気から解放されたいと願う市井の姿が、この活力あふれるミュージカル・シーンに投影されていると思うと、一連の歌とダンスは更に興味深く観ることができる。

 尚、画面全体には海中を意識させるようなダーク・グリーンが強く主張されており、これが明らかに本作のキー・カラーになっている。少し隠微でお洒落な雰囲気が漂い、他の作品にはない独特のセンスが面白かった。
[ 2021/12/16 00:48 ] ジャンルファンタジー | TB(0) | CM(0)

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