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ふたりの人魚




「ふたりの人魚」(2000中国独日)star4.gif
ジャンルファンタジー・ジャンルロマンス・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 上海でビデオの出張撮影の仕事をしている男は、ある日、撮影先で人魚のように美しい水中ダンサーのメイメイにひと目ぼれする。ふたりはつきあい始めるが、彼女には謎めいた行動が多かった。そんなある日、彼女を自分の恋人ムーダンだと言い張る男まで現われる。

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(レビュー)
 人魚に惹かれた映像作家の切ない恋心をミステリアスに綴ったファンタジー・ロマン。

 映像作家の「僕」はナイトクラブでメイメイというダンサーに一目ぼれする。しかし、ある日メイメイのことをムーダンと呼ぶマーダーという男が現れて奇妙な三角関係が形成される。果たしてメイメイはムーダンなのか?「僕」はカメラを回しながら彼女の秘密を捉えていく…というのが話の大筋である。

 その合間にマーダーの過去や、彼とムーダンの関係が明かされ、やがて「僕」とマーダーは同じ容姿の女性を愛した者同士、友情めいた関係で結ばれていく。

 本作で面白いと思ったのは、メイメイとムーダンの正体を最後まで伏せて、あくまで謎の存在として描いた点である。もしかしたら本当に人魚だったのかもしれないし、メイメイとムーダンは別人だったのかもしれない。二人の男が彼女に惹かれ翻弄されていく所に、ファンタジックな趣が加わり独特の鑑賞感が残り、観終わった後には、まるで狐につままれたような、そんな不思議な余韻に浸ることができた。

 監督、脚本は中国の俊英ロウ・イエ。本作は彼の長編第3作となる。残念ながら自分はこの監督の他の作品を観てないので、一体どういった資質の作家なのか分からない。ただ、本作を観る限り、映像のセンスや物語の巧みな語り口に魅了されっぱなしだった。

 まず映像的には、非常にスタイリッシュでケレンに満ちたカットが多い。とりわけ上海の夜の街はカラフルなネオンに彩られ、ちょっと異世界を思わせるような幻想的な空間で惹きつけられた。

 また、主人公が映像作家ということでPOV形式のカットが幾度か登場してくるが、これも生々しい臨場感をもたらしていて面白いと思った。

 メイメイとムーダンを捉えたフォトジェニックな映像の数々も、まるでアイドル映画よろしく女優の魅力を存分に引き出していると思った。

 そして、本作を観終わって思ったことは、監督のロウ・イエは主人公の「僕」に自身を投影していたのではないか…ということである。

 監督によるかもしれないが、世の中で名匠、巨匠と呼ばれる人たちには大概、お抱えの女優が存在するものである。ゴダールにはアンナ・カリーナというミューズがいたし、増村保造には若尾文子というミューズがいた。新たな女優を見出して撮り続けるという監督もいるが、基本的には決まった女優とコンビを組んで映画を撮る方が仕事はやり易いだろうし、自分の思い描いた”絵”を再現しやすいのかもしれない。だから、映画監督というのは常に自分の作品世界に合致した”ミューズ”を探し求めている。
 これは映画監督という職業の”性”なのかもしれない。そして、不確かで神秘的になればなるほど、それは魅力的な物に思えてくる。

 おそらくロウ・イエ自身も映画監督である以上、作品の”ミューズ”を常に探し求めているに違いない。その思いを本作を通じて表現したかったのではないだろうか?

 キャストでは、メイメイとムーダンの二役を演じたジョウ・シュンの魅力に尽きると思う。難しい役どころを難なく演じきっていて素晴らしい。鑑賞順は前後してしまったが、彼女はこの後に「小さな中国のお針子」(2002仏)という作品にも出演していた。その時は瑞々しい魅力を放っていたが、本作ではまた違った雰囲気で別人のような演技を披露している。
[ 2021/12/19 00:35 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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