「スプリング・フィーバー」(2009仏中国)
ジャンルロマンス
(あらすじ) 夫ワン・ピンの浮気を疑う女性教師リン・シュエは、探偵ルオ・ハイタオに調査を依頼していた。ほどなくして相手がチェンという青年だと判明すると、リンは激昂し夫婦関係は破綻してしまった。その後、ワン・ピンとチェンも破局を迎える。一方、ハイタオは恋人がいながら調査していたチェンに惹かれていくようになる。
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(レビュー) 5人の男女の複雑な恋模様をシリアスに綴った愛憎劇。
監督は
「ふたりの人魚」(2000中国独日)のロウ・イエ。「ふたりの人魚」に比べると地味な作品であるが、愛に翻弄される男女の姿を乾いたタッチで描いた所に共通性を見出せる。
尚、ロウ・イエは前作「天安門、恋人たち」(2006中国仏)が中国当局から上演禁止を食らい5年間の映画製作禁止処分を受けた。しかし、彼はその処分を無視して家庭用デジタルカメラでゲリラ的に本作を撮り上げたという。
大変苦労して撮影しているということは映像を見るとよく分かる。そこかしこにゲリラ撮影と思しきカットが存在するし、照明もろくに照らされないカットがあり、画面が暗くて何をが映っているのかよく分からない個所もあった。
ただ、こうした逆境の中で撮影されたことを知ると、何とも愛おしく味わいのある映画に見えてくる。たとえ不格好に撮られたとしても、そこに込められた監督の熱意や思いが透けて見えてくることで、どうしてもこの物語を描きたかった…という強い信念が感じられた。
物語は、あるカップルの破綻から始まる。ワン・ビンとチェンは同性愛の関係にあるが、ワン・ビンの妻リンの依頼で探偵ハイタオが二人の関係を暴き離婚に至ってしまう。話はこれで終わりかと思うとさにあらず。今度はハイタオがチェンと同性愛の関係に陥り、更に複雑怪奇な愛憎ドラマへと発展していく。
正直、誰にも感情移入することができないまま作品を観終わってしまった。
誤解を恐れずに言うなら、この複雑怪奇な愛憎劇をどこかコメディのように捉えてしまう自分がいて、まるで昼メロでも見ているような感覚で鑑賞するしかなかった。同性愛、W不倫という題材自体、昨今では特段目新しい物でもなく、若干退屈してしまったのも事実である。
とはいえ、セックス描写はかなり濃厚に描かれており、厳格な規制が敷かれている中国でここまで赤裸々に男性同士の性行為を描いたことは驚きに値する。よくここまで大胆な描写に挑戦したと驚かされてしまった。
中国を舞台にした映画であるが、実際にはフランスと香港の出資を受けて製作された作品である。当然、中国本土では上映されることなく今に至っているが、カンヌ国際映画祭など海外では高い評価を得ている。果たして中国本土で今作が日の目を見る日は来るのだろうか…。