「懲罰大陸★USA」(1971米)
ジャンル社会派・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 1970年、ベトナム反戦運動の盛り上がりに危機感を覚えたニクソン大統領は、新たな治安維持法を発令する。これにより反政府的な若者たちが次々とカリフォルニアの荒野へと連行されてくる。そこは危険分子への見せしめを目的とした人間狩りの場、“懲罰公園”だった。
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(レビュー) いわゆる嘘のドキュメンタリー”モキュメンタリー”である。実際にはこのようなことは行われなかったし、観ている方としてもこれは毒を利かせたブラック・ジョークとして受け止めることができよう。
ただ、作品に忍ばされた風刺は中々鋭いものがある。今となっては完全に作りものだと分かった上で観ることができるが、製作された当時はどのように受け止められたのであろう?
映画は、ヨーロッパのドキュメンタリー番組が懲罰公園の取材をするという体で進行する。カメラに収められるのは、テントの中に連行された若者たちを被告とした公開裁判、広大な砂漠の中で繰り広げられる人間狩り。この二つのカットバックで進行する。
正直、作品としての出来はそれほど高くなく、低予算のチープな小品といった感じである。ただ先述したように、当時の反戦運動、泥沼化していくベトナム戦争を反映させた風刺は中々興味深く受け止められる。実際に米軍がベトナムから撤退するのは1973年であり、本作が製作された当時は戦線は拡大の一途をたどっていた。おそらく製作陣も反ニクソン主義という観点から、このモキュメンタリーを作ったのであろう。
監督はこの手のモキュメンタリーを得意とするピーター・ワトキンス。核戦争の恐怖をシミュレートした「THE WAR GAME」(1965英)で一躍世界中にその名を轟かせた作家である。「THE WAR GAME」もかなり趣向を凝らした作りだったが、その演出はここでも徹底されている。ただ、「THE WAR GAME」もそうだったが、どこかでやはり噓臭さは感じられ、真に迫るというほどではない。
特に、人間狩りのパートはアクション映画よろしくエンタメ的な演出が若干感じられた。撮影クルーが追いかけられる若者たちを先回りして捉えていたり、激しい銃撃戦を割と冷静なカメラワークで捉えていたり等。自分はユーモアとして捉えたが、そうであるなら本作の反権力、反ニクソン的なメッセージは薄まってしまうように思った。
このあたりはエンタメ性との兼ね合いから難しい問題である。