痛快青春群像劇。時代劇というよりも現代劇に近い感覚で見れるのが面白い。
「竜馬暗殺」(1974日)
ジャンル青春ドラマ
(あらすじ) 慶応三年。幕府から追われる身となった坂本竜馬は、一時身を隠すことになる。更に、薩長左幕派と距離を置いたことで、彼は身内からも命を狙われるようになっていた。竜馬の盟友中岡慎太郎が暗殺の使命を自ら買って出る。ところが竜馬が近くの女郎幡の部屋に潜り込んでいたためにその機会を逃してしまった。慎太郎は彼を殺さずに済んで内心ほっとした。その後、幡の元に弟右太が数年ぶりに帰って来る。実は彼は薩摩藩が仕向けた暗殺者だった。きな臭い匂いを嗅ぎ取った竜馬だったが、右太の前では敢えて隙を作って見せる。それがかえって右太の心に迷いを生じさせた。町では”ええじゃないか”の騒動が湧き起こっていた。竜馬はその群れ紛れて慎太郎に会いに行く。そこで彼は、暗殺を失敗し窮地に立たされる慎太郎の姿を見る。
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(レビュー) 坂本竜馬が暗殺される直前の二日間を描いたドラマ。
粒子の粗いモノクロ映像が作品に荒々しさを生んでおり、そこが暗殺劇というサスペンス調のドラマに異様な迫力をもたらしている。竜馬と慎太郎の友情と憎しみの葛藤も泥臭く写り中々良い。
竜馬を演じるのは原田芳雄。慎太郎を演じるのは石橋蓮司。共に存在感を見せ付け印象的だ。右太役の松田優作も無口で閉鎖的な青年を強烈な個性で演じている。
物語はこの3人の青春群像劇という作りになっている。
史実に基づいた時代劇のスタイルを取りながら、中心となるのは、倒幕を掲げた彼ら若者達の混乱していく姿になる。志を失い時代に翻弄されていく姿に、歴史の教科書に載っているイメージは脆くも崩れさっていく。丁度それは、変化を求めて蜂起した60年代の若者達の姿にダブって見えてくるから不思議だ。彼らの運動は急速に萎縮していったが、製作当時の世相にリンクさせた着眼点は実に面白い。
ひたすら破滅の道を辿るドラマになっているが、時折ユーモラスな描写があるので決して鬱になる作品ではない。むしろ喜劇的な場面が幾つもあって笑いながら見れた。
例えば、ええじゃないかの白塗りをした3人が川辺で過ごすシーンなどは中々秀逸である。組織から落伍しもはや英雄でも何でもなくなった彼等は、平民の証したるメイクで意気消沈する。その姿になんとも言えないユーモアとペーソスを感じる。
また、ラストも実に人を食ったオチで痛快である。何を隠そう、このドラマで一番”したたか”だったのは女を武器に男達を手玉に取った幡なのかもしれない。時代を変えようと戦った男達がいる一方で、処世に長けたこういう女が全てをかっさらっていくというのは実に皮肉めいていて面白い。