「続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画」(2018米)
ジャンルコメディ・ジャンル社会派
(あらすじ) ジャーナリストのボラットは国家反逆の刑で収監されたが、このたび新大統領の恩赦のおかげで出所することができた。そんな彼に再びアメリカ渡航の命が下る。それは文化大臣のおサルのジョニーをトランプ大統領に貢物として贈るというものだった。早速アメリカに乗り込むボラットだったが、着いて早々に重大なトラブルに見舞われ…。
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(レビュー) カザフスタンの名物男ボラットがアメリカに渡ってハチャメチャな騒動を巻き起こすフェイク・ドキュメンタリー第2弾。2006年に製作された「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」(2006米)の続編。
前作は製作、原案、脚本、主演を兼ねたサシャ・バロン・コーエンを一躍有名にしたが、今回も前作同様、彼が独壇場の活躍を見せている。毒を利かせた笑いと痛烈な社会風刺。そしてお下劣なギャグ。全方向にケンカを売っているとしか言いようがない、その独特のスタイルは誰にも真似できない強烈な個性を放っている。本シリーズは正に彼ありきで作られた作品と言っていいだろう。
さて、前作ではアメリカの文化、社会通念をおちょくりながら痛烈な批判を浴びせていたサシャだが、今回はそこからさらに一歩進んで、なんと政治の世界にまで足を踏み入れていく。フェイク・ドキュメンタリーとはいえ、登場してくるのはマイク・ペンス前副大統領や元ニューヨーク市長でトランプ元大統領の顧問弁護士を務めたルドルフ・ジュリアーニといった本人たちである。ボラットは彼らの前でほくそ笑みながら毒をまき散らし、コケにしまくる。これはもう危険度極まりない体を張った演技と言えよう。
特にクライマックスとなるジュリアーニに仕掛けたドッキリ撮影は白眉だ。当然本人の許可なく上映に至ったわけであるから、よく裁判沙汰にならなかったなと思った。
一方で、本作はボラットと実娘トゥーターの父娘愛を描くハートウォーミングなドラマにもなっている。これは前作にはないサプライズで意外だった。実に浪花節的な展開でドラマに1本の幹を通している。
もっとも、相変わらず”常識”という名のネジが外れっぱなしなボラットであるから、この父娘愛も一筋縄ではいかない。ちょっとブラックで刺激が強い笑いもあり中々楽しむことができた。
キャストではやはりボラットを演じたサシャ・バロン・コーエンの怪演が印象に残るが、トゥーターを演じたマリア・バカローヴァの妙演も光っている。彼女の前半と後半の造形のギャップは見物である。