「イレブン・ミニッツ」(2015ポーランドアイルランド)
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) ある日の午後5時。一人の男が慌てて家を飛び出して妻の元へと向かった。その頃、女優をしている彼の妻はホテルの一室で映画監督の面接を受けていた。そのホテルの前ではホットドッグ屋の主人がヤクの売人に電話をかけていた。夫々の11分間が偶然の軌跡を呼び起こす。
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(レビュー) ある日の5時から5時11分の間に起こる様々な出来事を実験精神あふれる作劇で描いた群像劇。
主だった登場人物は、妻を追いかける男、その妻と映画監督、ホットドッグ屋の主人、ヤクの売人、強盗犯の少年、町の救急隊員、ビルのガラス清掃員、ポルノビデオを見ている一組のカップル等である。夫々の11分間を映画はモザイク状に描きながらクライマックスで見事に収束させている。実にしたたかに計算されたシナリオと言って良いだろう。
ただ、観ている最中は一体これは何について描いている映画なのか分かりづらい構成となっている。じっくりと根気強く観てあげないと余り面白みを感じられない作品かもしれない。映画を観終わる頃にはすべてがスッキリできるように作られているので、そこまで痺れを切らさずに観れるかどうか。ある種忍耐力が試されるような作品である。
また、このオチをどう捉えるかは観た人それぞれだろう。膨大な監視カメラの中でたった一台だけブラックアウトして終わるという結末は果たして何かの暗喩なのか?おそらく根気強く観続けていた人には興味深く考察できるエンディングだろう。
監督、脚本はポーランドの鬼才イエジー・スコリモフスキ。
「エッセンシャル・キリング」(2010ポーランドノルウェーアイルランドハンガリー)、
「ライトシップ」(1985米)、
「ザ・シャウト/さまよえる幻響」(1978英)等、一癖ある作品を撮ることで有名な監督であるが、今回もかなり変わった構成の作品となっている。
スコリモフスキの軽快な演出はすこぶる快調で、実験的なカメラワークを駆使しながら一瞬も飽きさせない作りに徹している。
例えば、散歩中の犬の目線で歩道を映したり、ドラッグに溺れる人間の朦朧とした意識を再現して見せたり、齢80になろうというベテラン監督とは思えぬ若々しいタッチが随所に見られる。
ただ、今回は実験的な意味合いが多い作品なためドラマは薄みである。仕方がないことだが過去作に比べると重厚さという点では物足りなく感じられた。