fc2ブログ










仮面/ペルソナ

「仮面/ペルソナ」(1966スウェーデン)star4.gif
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 女優エリザベートは、ある日突然、舞台上で言語障害を起こして全身麻痺に陥ってしまう。医者に一夏の転地療養を勧められ、看護婦アルマと共に海辺の女医の別荘を訪れた。そこで二人は患者と看護婦という結びつきを越えて親しく接するようになっていく。



ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 映画が始まっていきなり古いサイレント映画、子供と老婆と電話の会話、十字架の磔、フィルムの焼き焦げなどの映像が出てきて驚かされる。まったく意味不明なオープニングだが、実はこれらは映画を観終わる頃にはすべて理解できるようになる。全てが計算されつくされた演出だということが分かり溜飲が下がった。

 監督、脚本はI・ベルイマン。「神の沈黙」三部作を撮り上げたのちに製作されたのが本作である。神についての直接的言及はないものの、先述した十字架の磔のイメージカット等、かすかにそれらしきものが嗅ぎ取れる。やはりベルイマンの映画では「神」という題材は切っても切れないものであることがよく分かる。

 物語は実にシンプルで、ほとんどがエリザベートとアルマのやり取りで進行する舞台劇のような構成になっている。二人は一緒に過ごすうちに次第に姉妹のように仲良くなっていく。ところが、ある時を境に険悪な関係に陥ってしまう。そのスリリングなやり取りが、ベルイマンらしいクローズアップの多用と、どこか寓話的な会話劇の中で表現されている。

 そして、その中から徐々にエリザベートが失語症になった原因が明らかにされていく。とはいっても、ほぼアルマがエリザベートの過去を代弁する形で語られるのだが、面白いのはここからで、アルマは彼女に奇妙なシンクロニティを覚えていくのだ。同じ人生を共有したかのようにアルマはエリザベートの人生を背負い被憑依者のようになっていく。

 映画の中では、どうして二人が精神を共有できるようになったのかは明確に示唆されていない。ただ、想像するに、これは二人が辿ってきた人生から何となく合点がいく。

 おそらくアルマの中ではエリザベートに対する嫉妬や憧れのようなものがあったのだろう。アルマは一時の火遊びから妊娠、堕胎をした過去を持っている。これに対しエリザベートは女優業に専念するあまり我が子を捨てた過去を持っている。子供を産めなかったアルマと子供を捨てたエリザベート。きっとアルマからしてみれば、エリザベートの母性の欠落には許せないものがあったのだろう。可能なら自分が彼女に取って代わりたい。そこまで願ったのかもしれない。だからアルマはエリザベートにあそこまで執着し、そして彼女自身になろうとしたのではないだろうか。

 人間の奥底に潜むエゴや憎悪心を露わにして見せるのがI・ベルイマン映画の大きな特徴である。それが今回も、ややオカルトめいた寓話ではあるものの、じっくりと深堀されているような気がした。

 そして、人は誰でも仮面をつけて生きている…ということを、この映画はアルマとエリザベートという二人の女性を通して我々に訴えかけているような気もした。女優と看護婦、母親と女。女性には様々な顔があるのだ。

 本作は映像も素晴らしかった。ベルイマン作品ではお馴染みの名手スヴェン・ニクヴィストによるシャープなタッチがシーンの緊張感、圧迫感を禍々しく盛り立てている。

 キャスト陣の熱演にも見応えを感じた。リヴ・ウルマンの冷徹な表情、ビビ・アンデーションの情熱的な演技。夫々にベルイマン映画の常連であり、見事にミューズとしての輝きを堂々と放っていた。
[ 2022/01/30 00:28 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/2042-a2e78ac2