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ロストパラダイス・イン・トーキョー

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「ロストパラダイス・イン・トーキョー」(2009日)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 両親を亡くし、知的障害者の兄・実生と暮らしている営業マン幹生は、自分の性欲を処理できない兄のために、定期的にデリヘル嬢を呼んでいた。ある日、やって来たのは秋葉原で地下アイドルとして活動しながら風俗で働くマリンという女性だった。マリンは幹生の家に出入りするようになり、いつしか奇妙な3人の同居生活が始まる。

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(レビュー)
 うだつの上がらない営業マンと知的障害者の兄、地下アイドルをしながら風俗嬢として働く女の奇妙な関係をユーモアを交えながら描いたヒューマン・ドラマ。

 監督、脚本は「凶悪」(2013日)や「孤狼の血」(2017日)の白石和彌。若松孝二や行定勲監督の下で経験を積み、今や日本映画界を代表するヒットメーカーとなった氏の長編監督デビュー作である。
 尚、脚本には「ある朝スウプは」(2003日)「14歳」(2006日)の高橋泉が参加している。白石作品では後に「凶悪」でもコンビを組んでいる。

 インディペンデントの低予算な映画なこともあり、最小限の登場人物で繰り広げられるミニマルな作品である。しかし、そんなチープさを補って余りある、メッセージの力強さ、崇高さには心惹かれるものがあった。

 またラストの清々しさも忘れがたい。確かにこのラストにはご都合主義を覚えるのも事実だが、閉塞感漂うドラマをこうも開放的に締めくくった所に白石監督の天賦の才を感じてしまう。低予算のインディペンデント映画であれば、普通はもっとこじんまりとしたオチになっても不思議ではない。それを大胆にもミラクルなオチへ持って行ったところがアッパレである。

 また、後年の「凶悪」などのイメージのせいでパワフルな演出のイメージがあるが、このデビュー作にはそこまでの熱量はまだ見られない。唯一あるとすれば、後半のマリンの実家における乱闘シーンだろうか。しかし、そこ以外は3人の微妙な心の揺れを丁寧に描くことに専念しており堅実にまとめられている。

 キャラクターもそれぞれに個性的に描けていて面白く観れた。
 幹生は実生を介護しながら慣れない営業の仕事にストレスが溜まり精神的に疲弊している。そもそも営業向きではない性格なのに、どうして今までこの仕事を続けているのか不思議でならないのだが、そういう突っ込みはあれ、彼の日常には一切の光が見当たらない。

 そこに地下アイドルとデリヘル嬢の二足の草鞋を履く女マリンが現れ、幹生と実生の閉塞感に一寸の灯りをともしていく。正直言って、マリンの造形は他の二人に比べて今一つリアリティに欠ける部分があるのだが、ともかくドラマを引っ掻き回す役回りとしては上手く機能している。

 実際、3人の共同生活には温もりとささやかな幸福感に溢れており、観てて心が和んだ。東京の片隅でひっそりと肩を寄せ合いながら暮らす若者たちの苦悩と希望がそこには広がっている。自分はそれを見ながら自然と愛おしさをおぼえた。

 唯一残念だったのは、後半のマリンに関する”あるエピソード”に余りリアリティが感じられなかったことである。それによって3人の日常は暗転していくのだが、実際にこんなことが起こり得るだろうか?と少しだけ興が削がれてしまった。詳細を伏せるが、これは倫理的にも問題があると思った。
[ 2022/06/24 00:52 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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