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この空の花 長岡花火物語

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「この空の花 長岡花火物語」(2012日)star4.gif
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 天草の地方紙記者・遠藤玲子は、東日本大震災の際、被災者をいち早く受け入れた長岡市に取材にやって来た。しかし、彼女をこの地に引き寄せた理由はもう一つあった。それは、かつての恋人・片山健一から届いた手紙だった。そこには、自分が教師を勤める高校の生徒・元木花が書いた『まだ戦争には間に合う』という舞台、そして長岡の花火を見てほしいと書いてあったのだ。玲子は健一の元を訪ねる。

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(レビュー)
 長岡花火をモチーフに、過去の戦争と災害の歴史を振り返りながら、現代に生きる我々に平和と生の尊さを訴えかけた作品。

 監督、共同脚本は昨年惜しまれながらこの世を去った大林宣彦。老境に差し掛かり大病を患った身で撮り上げた2時間40分に及ぶ大作である。

 あの悲惨な戦争を二度と起こさないために我々は何をすべきか。戦争の記憶を決して絶やしてはいけない。そんなメッセ―ジが伝わってくる作品である。余りにもダイレクトに発せられているため少々説教くさく感じる部分もあるのだが、それを大林監督は演劇形式や紙芝居による回想形式といった、ある種エンタメに振り切ったスタイルを用いることで絢爛豪華に見せている。
 おそらく大林監督としては、ここまで明確に反戦メッセージを示さなくては今の観客には伝わらない、そう思ったのだろう。逆に言うと、それくらい現在の日本に漂う空気に危いものを感じたのかもしれない。

 映画監督は芸術家であり、エンターテイナーであり、一人の表現者でもある。その表現者としての使命がこのような作品を創り出したと考えれば、これは真摯に受け止めねばならない。

 物語は玲子と健一のカップルを軸に展開される。二人は長岡という場所に引き寄せられ過去の戦災の歴史を振り返りながら、夫々の進むべき道を見つけ出していく。

 かつては瑞々しい青春ロマンスを数多く撮り上げた大林監督だが、ここではそんな甘ったるさが一かけらもない。唯一あるとすれば、戦争の犠牲で現世に蘇った花という少女と現地の少年の間で繰り広げられる淡い恋慕か。ここには過去の大林テイストがかすかに嗅ぎ取れる。しかし、戦争や大震災といった悲劇がメインの話なので全体的にはシビアな内容である。

 それにしても、長岡に模擬原子爆弾が落とされたという事実は知らなかった。原爆の被災地と言うと広島や長崎を真っ先に思い浮かべるが、ひょっとしたら長岡に落とされていた可能性もあったということを知り驚かされた。

 大林監督の演出は実に奔放で若々しい。
 特撮とアニメーションを交えた実験精神あふれる映像。極端に短いカッティングと膨大なセリフの組み合わせで目まぐるしく展開される会話劇。俳優は画面に向かって語り掛け、現在と回想を往来し、フィクションとドキュメンタリーの境界を軽々と越えてみせる。正に変幻自在、自由奔放。本作は2時間40分という長尺な映画だが、その長さをまったく感じさせない。この演出力には脱帽するしかない。

 そして、これだけ奔放な作りだと普通であれば作品の印象は散漫になってしまうものだが、本作はドラマがしっかりとしているのでそうしたこともない。これはひとえに花というキーパーソンが全編に渡ってしっかり存在していたからだと思う。現在と過去、現実と虚構が入り混じる中で、ただ一人、花だけは不溶の存在として物語の中で生き続けている。

 本作において花に担わされた役割は相当に大きいと思う。玲子と健一という主人公カップルを引き合わすキューピッドであり、戦争の記憶が薄れた現代にその記憶を蘇らせるメッセンジャーでもある。大林作品らしい可憐さと処女性を併せ持った過去の数々のミューズを凝縮したようなキャラクターで一際印象に残った。
[ 2022/02/20 00:31 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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