「最後のサムライ/ザ・ チャレンジ」(1983米)
ジャンルアクション・ジャンルサスペンス
(あらすじ) アマチュアボクサーのリックは、ある日、車椅子の日本人から曰く付きの日本刀を運ぶ仕事を依頼される。不審に思いつつも京都の空港に降り立ったリックを待っていたのはヤクザのような男たちの襲撃だった。車椅子の日本人は無惨に殺され刀も奪われてしまう。こうしてリックは日本刀を巡る”ある兄弟”の争いに巻き込まれてゆくようになる。
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(レビュー) ボクサー崩れのアメリカ人が曰く付きの日本刀を巡る争いに巻き込まれていくアクションサスペンス作品。
全編ほぼ京都ロケが敢行されたアメリカ映画だが、奇妙な日本文化の描写は少なく意外にしっかりと作られている。
ただ、件の日本刀にまつわる歴史や、それを巡って繰り広げられる抗争理由は結構いい加減にしか描写されていない。実は、今回の兄弟間の抗争は戦前の先祖の御家騒動にまで遡る。これを冒頭のシーンで簡単に説明しているのだが、問題はその刀がどれほど価値がある物なのかさっぱり分からない点である。これでは一体何のために刀の奪い合いをしているのか、観ている方としても感情移入ができない。
また、どうしてリックに日本刀を運ぶ仕事を依頼したのか?その理由も最後まで分からずじまいである。シナリオは随分といい加減だなと思った。多少の突っ込み処は気にせず受け流すというくらいのスタンスで観るのがよかろう。
監督は骨太な作品を撮ることに定評があるJ・フランケンハイマー。アクションシーンの演出は、フランケンハイマーらしい豪快さで描かれており中々楽しめた。特に、クライマックスの決戦シーンは、チャンバラあり、忍者顔負けの秘密道具あり、果てはマシンガンを乱射する派手なドンパチもあり大変楽しめた。
音楽を務めたジェリー・ゴールドスミスのスコアもアクションシーンを猛々しく盛り上げていて良い。
キャスト陣も豪華である。刀を巡って争いを繰り返す兄弟役に三船敏郎と中村敦夫が扮している。当然クライマックスでは両者の戦いも用意されており、これはくしくも「用心棒」(三船)対「木枯し紋次郎」(中村)ということになる。これには自然と胸が躍ってしまった。また、三船側には宮口精二と稲葉義男がキャスティングされており、これは黒澤明監督の名作「七人の侍」(1954日)オマージュとも取れる。
主人公リックを演じるのは若きスコット・グレンである。最初は日和見な軽薄な青年だったが、抗争に巻き込まれる中で徐々にサムライ魂を持った気骨ある青年に成長していく様を好演している。
尚、今作はスタッフもキャストも豪華ながらVHSでしかソフト化されておらず、残念ながら今では配信か放送で観るしかない。知名度は今一つだが、色々と見所のある作品なので、ぜひ再販して欲しいものである。