「ゴーストランドの惨劇」(2018仏カナダ)
ジャンルホラー・ジャンルサスペンス
(あらすじ) シングルマザーのポリーンは叔母の家を相続し、2人の娘ヴェラとベスを連れてそこに引っ越した。しかしその直後、一家は2人組の暴漢に襲われてしまう。それから16年後、小説家として成功したベスは独立し、幸せな家庭に恵まれて充実した暮らしを送っていた。ある日、ヴェラからただならぬ電話がかかってくる。心配したベスは彼女の元に駆け付けるのだが…。
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(レビュー) 過去の惨劇に捕らわれた一家の恐怖をトリッキーな構成で描いたサスペンス・ホラー。
序盤は余りのめり込むことができなかったが、中盤で予想外の展開が待ち受けていて、それ以降は面白く観れた。
この物語のキーは妄想癖がある作家ベスの設定にあると思う。最初はベスの夢落ちの連続で辟易するのだが、中盤でそれが思わぬ効果を出し始める。どこまでがベスの妄想なのか。どこまでが現実なのか。観る方としては色々と想像しながら観て行くことになるのだ。敢えて惑わすような演出も効果的で、良く考えられた構成だと思う。
監督、脚本は
「マーターズ」(2007仏カナダ)のパスカル・ロジェ。フレンチ・ホラーの新鋭として登場し、昨今のホラーマニアの間で評判になっている作家である。「マーターズ」同様、今回もストーリーテリングと演出の妙に光るものがあり、改めてその力量が再認識される。
もっとも、クライマックスにかけて、いわゆる「悪魔のいけにえ」(1974米)的な展開に終始してしまったのは、それまでの期待値からすると、いささか凡庸な感が否めない。しかも、「マーターズ」ほどのパワフルな演出もなく、この系統の作品は数多あるため他との差別化ができていない所が苦しい。結局、サイコパスな暴漢に追われる恐怖というホラー映画の定域を抜け出せなかったのは残念だ。
また、ホラーとコメディは紙一重ということも本作を観て思い知らされた。映画で描かれる暴漢はサイコパスになればなるほど常人には理解しがたい異物となり、その結果、画面上で繰り広げられる凄惨なシチュエーションは”痛み”としてのリアリティからかけ離れてしまう。それをカバーするのは監督の演出になるのだが、本作はそこがうまくいっていないと感じてしまった。
キャスト陣は奮闘している。ヴェラ役とベス約は少女時代と成人時代で別のキャストが用意されているが、特に成人時代を演じた二人の女優の体を張った熱演は見応えがあった。
特殊メイクもリアリティがあって良かったと思う。